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縛られることに慣れ、いつの間にか浸かってた「ぬるい幸せ」になんか手を振ろう
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ロウきゅーぶ!〈2〉 (電撃文庫)
著者:蒼山サグ
イラスト:てぃんくる

 部長のロリコン疑惑から一ヶ月、ようやく周囲の噂も落ち着いてきた今日この頃。
バスケへの想いを再燃させてくれた大恩ある少女たち五人のため、昴は再び慧心学園バスケ部のコーチに返り咲く。
そして彼女たちのさらなる成長を目指し、小学校で合宿を行うことになったのだが、解決しなくちゃいけない問題は山積みで。
「ふぁ……見てる。昴さんが、こっちっ」
「ひな、おにーちゃんに見て欲しいなー」
「……まー、すばるんもヒトノコだしな」
「えへへ。紗季ちゃんはどうなのかな?」
「ちょっと私まだそういうのは興味がっ」
それ以上に色々な意味での問題が山積みでして!?

木陰からもう少し距離を取り、柔剣道場脇のベンチに腰掛けて遠巻きに真帆を見守る。
座ってから七本のシュートを数えた頃、後ろからゆっくり静かに人の気配が迫ってきた。
「智花」
すとんと隣に座り込んだ少女の顔を視界に収め、笑みを交わし合う。ピンク色のパジャマ姿で、春たく季節とはいえ少し寒そうだった。
「……もう、寝てた?」
「はい、ひなたがお風呂ですっかり熟睡しちゃって、みんなで着替えさせるのが大変でした。あはは。……でも私はちょっと、すぐ眼が覚めてしまって、それでお布団の中で考え事してたら竹中君が帰ってきて、小さい電気だけ点けて奥まで案内して、戻るとき隣を見たら真帆がいなくて、それで外に出てみたら……ふふ」
「……ごめんな」
「ふぇ?」
「寝付けなかったの、俺のせいだろ。相談、持ちかけちゃったから」
「ぜんぜんです。頼って頂けて嬉しいですし…………昴さんには、本当に感謝してます。私、みんなと一緒にいられれば、それだけで満足だって思ってましたし、それは今もそうなんですけどー」
智花は言葉を一度止め、遠くの真帆を優しい瞳で見つめる。
「―でも、やっぱり。嬉しいみたいです、すごく。友達がバスケ、頑張ってるところを見るのって。……昴さんが来てくれたから、みんなやる気になって、私も嬉しいんです。本当に、ありがとうございました。……できれば、これからもよろしくお願いします。……これからも、ずっと」
はにかむ智花の声は次第にフェイドアウトしていき、最後の方はほとんど聞こえなかった。
けれども、彼女の気持ちはちゃんと受け止められたと思う。
「……真帆は、どのみち頑張っていたと思うけどな。……ううん、真帆だけじゃなく、みんなか。でも、うん。俺だって嬉しいよ。バスケに一生懸命な子たちと出会えたおかげで、俺も頑張れる。智花に、そしてみんなに……俺だって感謝してる。……だから、今もここにいるんだ。はは。だって合宿なんて、賭けの約束には入ってなかったしな」
「昴さん。……えへ」
見つめ合って、照れくさくなって。二人して目を逸らす動きがシンクロする。
それからは、無言。ただ黙って、月明かりに伸びる真帆の白い腕を見つめ、壁に跳ね返ったボールが震える音を聞く。そんな時間が、長らく過ぎる。
「たぶん、大丈夫だと思う」
顔から火照りが引いた頃、ゆっくりと眩く。
「えっ?」
「真帆と、竹中。きっと何とかなるよ。だから智花。今夜は安心して、眠ると良い」
「……よかった。ふふっ、実はさっき竹中滑の顔を見たとき……そうなのかなって、ちょっとだけ思いました」
ふうっと智花が長い息を吐き、そこで再び言葉が途切れた。
真帆のシュートは、まだまだ続く。たぶん、合計で二百本打つつもりなのだろう。ちょっと頑張りすぎかな、とも思うけど。
あの子が自分で選んだ数だ。尊重して、見届けることにする。

「……弱ったな」
それから何分か経った頃。真帆は跳ね返ってきたボールを拾うと、不意にごろりと芝生の上に仰向けになった。どうやらノルマが終了したらしい。
そこで、もういい加減夜も遅いし迎えに行って労ってやろう……と腰を上げかけたところ、
「……あれ、智花?」
ふと横を見れば、パジャマの少女は柔らかく眼を閉じて、聞こえてくるのはすうすうと穏やかな吐息。……なるほど。どうりでさっきから左半身に淡い重みが伝わってきてたはずだ。
いやはや、これでは下手に動けない。ならば仕方あるまいと、真帆が戻って来るのを待って一緒に帰ろうと思い直したのだが、
「って、うわー。あっちもか……」
もう一度目をやれば、時計塔の壁際でシャツをはだけ、おなか丸だしで大の字になった真帆が、いつの間にやら遠巻きでも分かるほど大らかな一定のリズムで横隔膜を収縮させていたのだった。
「……弱った、な」
まずいそ、あの汗だくヘソ出しは。早く何とかしないと風邪を引かせてしまう。
しかし智花が今まで寝付けなかったのも俺の責任なので、起こしてしまうのは実に忍びない。
―長谷川昴、ここに進退窮まれりである。

「……で、こんな折衷案を選んでみたものの」
大失敗だった。
追い詰められた俺はまず智花を起こさないようにおぶり、真帆の許へ。それから二人目の膝裏と背中に腕を差し込んで持ちあげ、両者を一度に小屋へ運ぽうと試みたわけだが。
うん、これ、新手の筋トレ方法として商標登録してしまいたいくらいキツイ……。
おんぶと言えども後ろの智花は手足を回してくれているわけでもないので、俺は落とさぬよう思いっきり前傾せざるを得ず、そんな体制だと真帆の体は腕の筋肉だけで支えなくてはならない。いくら細身の小学生女子とはいえ……この抱え方では重い……重すぎる。既に二の腕はぷるぷる、智花はふらふら、限界が近いのに否応なしに歩みは牛歩を強いられる。……鳴呼、三途の川が見えそうだ。
「たすけて……誰か」
無意識に声が漏れる。

―ぎゅ。

なんと、神の思し召しか。後ろの智花が急に、抱き枕にするように俺の首筋と腰へしがみついてきてくれた。……助かった。これなら、なんとか。
「――って、もしかして智花、起きてる?」
小声で訊いてみたが、返事はすうすうと吐息のみ。……やっぱり偶然の助けか。
「ん、とにかくありがと。……はは。智花って、幸運の女神様かもな。俺にとって」

―ぎゅ。

もう一度強く、智花が身体を押しつけてくれたような気もしたが……既にあちこちの筋肉が限界で、それどころではなかった。

交換日記 (SNS)05- ◆Log Date 5/20◆
紗季『はーい、緊急会議はじめまーす。』
あいり『は、はいっ。』
紗季『お、珍しく積極的ね。良い事よ。では香椎愛莉君。』
あいり『えへへ。智花ちゃんは起きていたと思いますっ。』
紗季『ふむ。証拠はありますか?』
あいり『入ってきたときはぎゅうってしてたのに、長谷川さんがお布団に下ろそうとしたときすぐに離れちゃったからです!』
紗季『うん、君もなかなか観察眼が備わってきたわね、満点です。……ふふ、完壁に狸寝入りね、あれ。気付かなかったのは、たぶん長谷川さんだけ。』
湊智花『ちょ、ちょっと!濡れ衣だよっ!』
紗季『あらあトモ、ずいぶんとお早い反応で。みんなマナーモードなのにね、今。』
湊智花『……あ。』
あいり『えへへ、良いなあ智花ちゃん。……でも、本当はお姫様だっこの方が良かったよね、智花ちゃんも。真帆ちゃん羨ましいなあ。ぐっすりで覚えてないのだろうけれど。……ちょっと、もったいないかも。』
湊智花『ち、違うのっ!最初は本当に寝ていたのだけど途中で眼が覚めて、その時昴さんがすごく真剣だったから、邪魔しちゃダメって思って……!それに私、お姫様だっこなんて……別に興味……っ!』
紗季『はいはい。今度直接お願いしてみると良いわよ、『抱いて下さい!』って。ふふふふふ。』


ロウきゅーぶ!〈2〉 (電撃文庫)です。
合宿です。お泊まりです。だんだんスキンシップが増えております。
ひなたちゃんのパンツも手に入ります。
幼なじみも絡んできます!
スポーツコメディなんです!


ロウきゅーぶ!〈2〉 (電撃文庫)

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ロウきゅーぶ! (電撃文庫)
著者:蒼山サグ
イラスト:てぃんくる

少女はスポコン!コーチはロリコン!?ハートフルなさわやかスポコメディ!
高校入学とともに部長のロリコン疑惑で部活を失った長谷川昴。ただでさえ小学生の話題はタブーなのに気づけばなぜか小学校女子バスケ部コーチに就任って……!? 
「ん? ぱんつなら心配ないよ、ほらっ」(三沢真帆)
「やっぱりっ、でか女なんだわたしっ!」(香椎愛莉)
「おにーちゃんの背中が気に入りました」(袴田ひなた)
「あの、そ、そろそろご指導の方を──」(湊智花)
「いろいろ面白くなってきたわね、ふふ」(永塚紗季)
五人の個性的な少女たちの猛烈アピールに戸惑いながらも、それぞれの想いを守るため昴はついに男を魅せる!
小学生の女子だって抱えている悩みは多いのです。そんな彼女たちに翻弄される、さわやかローリング・スポコメディ!


「昴、みんなに優しくしてあげてね、緊張してるの、あんただけじゃないんだからね」
微笑みを携え、しかし教師の顔でそう言った。
「……分かってるよ」
返事を聞くと、満足そうな顔でミホ姉は今度こそ遠くに消えていく
ったく、しょうがない……やるしか、ないか。
正直、この指導が自分にとって何か足しになるとはやはり思えない。だが、ここまで来てしまったのだ。徒労に終わらせぬためにも、せめてミホ姉の教え子たちには何かしら伝えてやれるように、出来るだけ努力してみるか。
……それにまあ、コーチング白体は別に嫌いじゃないしな。
―― 一つ、二つ、深呼吸。
目の前の鉄扉を開けば、そこで生徒たちが待機しているのだろうか。それとも、自主練なり遊び半分の紅白戦なりしている最中か。一言目はどうする?あまり軽い態度だとアホっぽいし、かといって言葉が足りぬと怖がらせてしまうかもしれない。最初は引かれないように敬語を使うべきだろうか。それともいきなりフレンドリーにタメ口か……?
どうする?どうする?
「くそ、悩むだけ無駄だ」
考えたって、答えなど出るはずもない。勢い任せでドアを開いて、あとは出たとこ勝負だ。
よし、覚悟を決めてやる。
ノブに汗の滲む手をかけるそして、力一杯に引き開け――

『お帰りなさいませ!ご主人様!』

すぐに、閉じた。どうやら緊張のあまり幻覚を見てしまったらしい。
幻覚だと、信じたかった。

もちろん、そうそう都合良く幻覚なんぞ見るはずもなく。意を決して再突入すると、扉の前に整列していた五人の少女たちは、

『お帰りなさいませ!ご主人様!』

さっきと一言一句違わぬ台詞で再び俺を迎えて下さった。
混乱した頭で、順繰りに全員の姿を見回す。
少女たちは皆頭に白いカチューシャとひらひらしたエプロンを装備し、その下に重苦しそうなドレスを着込んでいた。
ぱっと見、服は二種類あるらしく、色はどれも黒だが 三人がロングスカート、二人がミニだった。ミニの二人は膝丈のタイトな靴下も身につけており、一方はレースのフリルで彩られた目の細かい黒のメッシュで、もう一方の子は赤と黒のボーダー。
――などと、細かい説明はおそらく時間の無駄であろう。
彼女たちの外観を叙述するなら、一言で良い。
要するに、メイドさんなのだ。
こんな地方の街で暮らしていても、一応『都会ではメイドさんが流行ってるらしい』くらいの情報なら人ってくる。が、まさかここまでの浸透率だったとは思いもよらなかった。メイドさんがいる場所、と言ってもせいぜい喫茶店くらいのものだと思っていたのだが。
メイドバスケ部か、一体誰が得するんだろう。
って、そんなわけ有るか。この状況で陰謀の匂いを嗅ぎ取れない輩などそうはいまい。
改めて、メイドさんたちの顔に目を向けてみる。うむ、ノリノリなのは二人だけで残りの三人からは嫌っそおなオーラが内面からにじみ出ている。つまり誰かが強制した結果こんな事になってしまったと考えるのが妥当だ。ではその誰かとは?考える必要もなかろう。
「主し訳ない!ミホね……篁先生が無茶を言ってすまなかった。心よりお詫び申し上げます!」
腰を直角に曲げ、可能な限り真撃に頭を下げ続ける。もう二度と面を上げないほどの覚悟で。
……あんにゃろう。さんざんそれらしい事をのたまっておいて、その実目論見が裏目にでた時の保身に逃げ出しただけじゃれえか!
「えっとー、ご主人様。何のことですか?」
「え?」
ところが返ってきた言葉が予想と違ったので、つい予定より早く体を戻してしまった。
ざっと五人の顔を見渡すと、真ん中に立っている子がにかり、と笑いかけてきた。今、ロを開いたのはこの子だろうか。栗色のセミロングヘアを二つに結っており、ぱっちりとした大きな瞳が特徴的な子だった。こぼれる白い歯から、五人の中でも特に快活な印象を受ける。
ちなみにこの子はロングスカートで、ノリノリだった内の一人だ。
「えっと、篁先生に無理矢理着せられたんじゃないの?それ」
目線を真ん中の子から徐々に周りへとずらしつつ、尋ねる。疑っているわけではないが、どうもこの子と他の子には気持ちに温度差があるような気がする。下手したらこの子は既にミホ姉の手の内、という可能性もあるので、出来れば他の子の声も聞いてみたい。
などと思っていると、
「違いますよう、これはご主人様への歓迎の表れで、みんな自主的に着たんです。ね、もっかん?」
まるで内心を読まれたかのようなタイミングでその子が向かって右隣の少女に顔を向け、伺いを立ててくれる。
そして――呼びかけられた、ざっくりとシャギーの入ったショートカットと、左眼の下にあるほくろが目印の子は、数秒の沈黙を置いてから、
「………………はい」
まさに蚊の鳴くような声で短く返事をした。目線を落とし、床を見つめ絞り出すように。なんだか嫌気が胸の中で煮えたぎっている様子が目に見えるようなんですが。

どう見ても言葉を額面通りに受け取れる態度ではない。明らかに異常。いや、異常と言えば全員がメイド服な時点でそうなのだが、それに輪をかけて……何かが変だ。
もしかして学校の方針としてコスプレ部活という奇怪な新機軸を推進しているのか?などと荒唐無稽な仮説も浮かんだが、脇に目をやると隣のコートを使っている女子バレー部はいたって普通だった。まあ、当たり前か。
「……あの、ご主人様。初対面ですし、とりあえずみんなで自己紹介とか、しませんか?」
長らく怪訝な表情を浮かべたままだんまりしている俺を不審に思ったのだろう、図抜けて長い髪を左右で三つ編みに結わえた眼鏡の少女が、少し困惑の色を浮かべつつもはきはきとした口調でそう打診してきた。
……いけない。あまり言葉が少ないと怖がらせてしまうかもしれないと、自らに釘を刺していたはずではないか。
「……ごめん、そうだね。そうしよっか。じゃあまずはみんなの名前とか、聞かせて下さい。」
努めて笑みを作り、顔色をうかがう。ああ、背中がもぞもぞする。こんなしゃべり方で良いのかな。変な奴だと、思われてないだろうか。まあ、変なのはお互い様のような気もするが。
返事を聞くと、五人は少し間を置いて互いにアイコンタクトを取るようなそぶりを見せる。
それから全員で声を揃えて、

『かしこまりました、ご主人様!』

……これはどうしたものか。
見た目のインパクトが強すぎて今の今まで流してしまっていたが、なんだご主人様って。これからずっとそう呼ぶつもりなのだろうか。……それは困るぞ。
「えっと、その前に……その『ご主人様』っていうの、止めてもらえると助かるんだけど……」
伝えると、再びしばしの沈黙。―と、今度は二つ結びの子が中心となって円陣が組まれ、何やらこそこそと内緒話が始まった。あれ、失言だったか?機嫌を損ねてしまったのだろうか。しかしこればっかりは譲れないしなぁ。むず痒さでどうにかなっちまう。
色々考えてるうちに円陣が解けた。彼女たちは元通りに整列し、先程と同じように声を揃えると、

『わかりました、お兄ちゃん!』



ロウきゅーぶ! (電撃文庫)第一巻です。
ロリきゅーぶじゃないですよ。バスケットボールを通じて女子小学生と仲良くなっていく素晴らしいスポーツコメディです。小学生のメイドさんをはべらかす内容じゃないですよ。
ロウきゅーぶ! (電撃文庫)を読んで「俺は女バスのコーチになる!」なんてどこかの海賊志望者みたいなことを思っちゃわないように(^^
気持ちは分からんでもないが……



ロウきゅーぶ! (電撃文庫)

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インフィニティ・ゼロ~冬 white snow (電撃文庫)
著者:有沢まみず
イラスト:にのみやはじめ

ある寒い日のこと、俺は街の公園で不思議な少女と出会った。レイと名乗るその子は、死んでしまった猫を胸に抱き、言っていることは意味不明なことばかり。
これは関わらない方が身のためと、そっと俺は逃げだそうとしたが、いつの間にか相手のペースに巻き込まれ……。
だが、この少女、実は千年の間、闇に毒く異形のモノ達を浄化してきた一族の巫女だったのだ。神を降ろし退魔を行う唯一の存在一しかし、そのために少女が払う代償は……。
おかしくも悲しくせつない物語


Aさんもホシさんも、拳銃を持っていた男も既に中にいる。俺は素早く状況を見て取った。
何時の間にかサトーさんの姿は消えていて、代わりにまた、芋虫どもが壁から滲み出していた。
俺は彼の言う通り、ぜロを抱え上げようとして。
ずるりと足を滑らせた。
床が芋虫の体液でぐしょぐしょだった上に、俺自身も相当、体力を消耗していたからだ。俺は引き攣った笑いを浮かべながら、彼女をもう一度、抱き起こそうと手を伸ばし。そして、悲鳴を聞いた。
集まり出した芋虫どもがもぞもぞとエレベーターの方に向かって、這い出していた。悲鳴を上げたのはAさんだった。彼は錯乱しきって、叫ぶ。
「そんな蛇の仲間、置いていけ!早く扉を閉めろっ!いいから、閉めろっ!」
よれよれコートは怒った。
「な、馬鹿を言うな!」
「なにい?」
「貴様は馬鹿だと言ったんだっ!大人しくそこで震えてろっ!」
よれよれコートが怒鳴り返す。Aさんは沈黙した。誇りを傷つけられたような表情が、やがて、異常な笑みに取って代わる。
何時の間にか彼の手には拳銃が握られていた。
その手がゆっくりとよれよれコートに向けられる。彼も、俺も、ゼロも凍ったまま身動き一つできなかった。
ばん。
乾いた破裂音が辺りの空気を震わせ、よれよれコートは血の滲み始めた腿を押さえて倒れ込んだ。苦悶のうめき声を上げる彼を跨ぐようにして、Aさんは開閉ボタンに手をかける。扉が閉まる最後の一瞬まで、Aさんは狂った笑いを浮かべていた。
「いっちゃった……」
ゼロがぽつりと眩いて、俺の手を握った。俺の身体が細波のように震えた。押し寄せてくる
強烈な感情で頭が真っ白になった。
「そっ、それが……お、お前の」
生涯で初めて経験する、絶望的なまでの怒り。
「それが命を賭けて、お前を守った者への礼儀か――?!」
俺は力一杯叫んで、床を拳で打ちつけた。
俺のささくれ立った心は、柔らかい手の温もりで抑えられた。ゼロが澱で濁った瞳を向け、笑いかけていた。
「ああ、やっぱり、りあさんだ」
彼女は動かない身体を懸命に寄せ、俺の手をぎゅっと握る。その力はあまりにも弱々しかった。
辛うじて俺が分かるのは、サトーさんの召還が中途半端だったためだろうか?
皮肉なことにそれ故、彼女の心は崩壊を免れたようだ。だが、ここは二十五階。エレベーターは行ってしまった。
俺は彼女を抱き寄せ、抱きかかえ、立ち上がった。
ここで次のエレベーターを待つべきだろうか?
表示されている階数は片側が九階と十七階と二十一階。反対側が八階と二十階が二つ。そのいずれも下に向かっている。Aさんという攻撃先を見失った芋虫はしばらく、うろうろしていたが、どうやら、俺達で我慢することにしたらしい。
汚らわしい潮となって、もうすぐ側まで押し寄せていた。
ダメだ。
ここでジッと戻ってくるあてもないエレベーターなんか待っていられない。俺は暗澹とした思いで、左右に目を走らせた。どうしたらいい?
なにか打つ手は?
ゼロの身体は羽毛のように軽かった。柔らかく華奢で、哀しい程に暖かかった。俺はぎゅっと彼女を抱きしめ、決意した。
少なくとも、この子だけは絶対に助けてみせる。彼女は、この状況がよく分かっていないのか。笑いながら、その小さな手を俺の胸に当てた。
「りあさん。わたし、ぽっぷこーんたべなければよかった。さとーさん、よべたからいいやってあまったのたべちゃったの」
俺は群がってくる芋虫を蹴散らし、後退して、
「いいさ。ポップコーンぐらい好きなだけ、食べるといいよ」
「でも、ぽっぷこーんあったら、さとーさん、もういちどよんで、りあさんをたすけてあげられるのにね」
俺ははっとしてゼロを見下ろした。よく見ると、その笑いは精一杯の泣き顔だった。彼女にも分かっているのだ。俺達が置かれた救いようのない状況を。身体中を叩きつけられて、さぞ痛いだろうに。
それでも、彼女は笑うのだ。
くそっと思った。
「いやしいこでごめんね」
「……なあ、ぜろ」
震える声で俺。彼女の着ているトレーナーの袖を引き伸ばし、手を隠す。皮膚の露出を最小限にする、せめてもの……。
「しばらく、目をつむっていてくれよ」
「きす?」
こんな時だというのに、その一言には笑ってしまった。
「うんにゃ。それは助かってからのお楽しみ。いくぞっ!」
と、かけ声をかけ、俺は彼女を抱えたまま、一気に芋虫の塊の中に足を踏み込んだ。顎をがちがちいわせながら群がってくる奴等にジーンズ越しに噛みつかれ、激痛が走った。
が。
構わず蹴散らし、踏み潰し、突き進む。毒々しい色をした芋虫の絨毯を駆け抜ける。目標は従業員用エレベーターホール。
そこまで、辿りつけばエレベーターは無理かもしれないけど、俺が上がってきた階段が使える。なんとか二十階まで下りて、カワタさんと合流するか、それより下でエレベーターを拾うことができれば、まだ、生き残るチャンスは出てくる。
ぽろぽろと芋虫が零れ落ちる壁の間を走り抜け、俺は従業員用のエレベーターホールに通じる扉の前まで辿りついた。
さっき俺が出ていった方と反対側の扉だ。しかし、そこにはご丁寧に、芋虫どもが特に密集して俺達を待ち受けていてくれた。
うじゃうじゃと蠢く汚らしいムシ。また、ムシ。
俺はごくりと唾を飲み込んでから、指先で摘むようにして取っ手を回し、勢いよく蹴り開けた。芋虫がぽたぽたと零れ、ぜロが俺の首に顔を埋めた。芋虫の崩落が一段落するのを待って、中に飛び込む。酷い。ダメだ。
絶望感が込み上げてくる。
俺が上がってきた階段には先程の何倍もの芋虫が層をなしていて、通り抜けられるような状況ではなかった。俺は救いを求めるように、従業員用のエレベーターに目を転じたが、同様。
今度はうめき声が出た。
芋虫が半開きになったドアの隙間からぞろぞろと這い出てくる。時折、漏電でもしているのか電気的な光と音がそこから零れ、ジュッとなにかが焦げる臭いがした。
きっと、操作盤かなにかにまで芋虫が入り込んでいるのだ。
その時、ゼロが俺の頬に震える手をかけた。
俺は彼女の視線を辿り、同じように震え出す。芋虫で埋まった階段を今、大きな黒い影がずるり、ずるりと這い上がってくる。その姿は間違えようもない。ムカデだった。それもただのムカデではない。
なんというか。
大きさも桁外れだったが、なにより。
あまりにも異常だった。
身体の各所から、木の幹に枝が生えるように別の身体が突き出ていて、その身体の節目にも更に別の小さな身体が生えている。
全体的に、大きな杉の木のような外形をして、それが、ぞわぞわぞわと風に騒ぐ木の葉のように毒き……。
一瞬、気が遠くなりかけるのをなんとか堪えて、俺は辺りを見回した。なにか、どこか、逃げ道を。

 

インフィニティ・ゼロ~冬 white snow (電撃文庫)です
有沢まみずさんのデビュー作です。いぬかみっ!やラッキーチャンスとは全く違ったモノです。
虫が苦手な人は背中が痒くなります。若干のグロ成分が配合されてます。
うへぇと言うほどでもないので安心してよめますです。
イラストと内容のギャップに萌を感じて下さい。


よれよれコート=Aさんをガードしていた男達のリーダー
Aさん    =なにかを証言しようとしてる人。敵対組織が居る。
さとーさん  =ホノカワヌシという名の神様
 



インフィニティ・ゼロ~冬 white snow (電撃文庫)
(電撃文庫)(ライトノベル)

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C3 シーキューブ〈4〉 (電撃文庫)
著者:水瀬葉月
イラスト:さそりがため

体育祭、いよいよ目前!!はじめての大イベントに、大張り切りで創作ダンスの練習に励むフィアたちのもとにやってきたのは、
「……ふぇ」
不思議な声を漏らす、ぼんやり無口なはにかみ少女。ちょっと変わったトコロもあるこの子、な一んかミョーなニオイがするんだけど、もしかして……?
そんなこんなで新たなメンバーも加わって、体育祭の行方や如何に貯飛んで跳ねて走って踊る!
競技もハレンチイベントも盛りだくさん!?でお送りする、第4巻なのですっ。

 

目が合って、道端の人間がビクリと身を仰け反らせた。
その反応に、いけないいけない、とこのはは口元を指でつついて表情を緩める。
本当に緩んだのかどうかは定かではなかったが。正直、わりとどうでもいい。

駅前に建っている時計を見上げると、時刻はすでに夕方だった。進展のない捜索を続ける自分の胸中を反映しているかのように、空は薄暗い。沈みかけの日のせいでもあり、先刻から頭上に広がってきた雲のせいでもある。昼間の陽気が嘘のようだ。明日の体育祭は大丈夫だろうか。
何事もなく体育祭を迎えられると思っていたのに。
ピクニックをしていたときは、いつもの春亮くんだったのに。
唇を噛み締め、踵を返す。再び繁華街に足を踏み入れた。今日何回目だろうか。忘れた。
その言葉が脳髄に引っ掛かり、心を揺らす。牙を立てる。

(忘れた)

忘れてしまった。春亮くんが。

(忘れた〉

昔のことを。あれだけ積み上げてきた、時間の全てを、

(忘れたー!)

それは、大事なもの。自分にとって。彼にとっては、どうだろう?大事なものだったと思いたい。信じたい。ああ、けれど、忘れた。
彼は覚えていない。
あのときのことも、あのときのことも、あのときのこともあのときのこともあのときのことも―何もかも!
どうして。誰のせいで。こんなことに。

――決まっている。あの男。あの男!
足を止め、眼鏡をなぞった。他人の反応を見ないでもわかる。今、自分は即座に通報されてもおかしくはない目つきをしているだろう。
落ち着けと自分に言い聞かせながら、とりあえず店と店の問を抜けて裏道に入った。自転車で通るのも難しそうな幅の裏世界。けばけばしいスナックの看板がさらに道を通りにくくしており、コンクリートの隙聞から伸びる雑草は死病に罹った棄民のような弱々しさで、漂ってくる酒と焼き鳥の匂いは演歌の雰囲気を形作る。深夜こんなところを女子高生が歩いていれば、それは絡んでくださいと悪党に頼んで回るようなものだろう。だが今は夕方だし、不運な誰かがこのか弱そうで可憐でスタイルのよい女子高生に絡んでくれば――ありがとう、ストレス解消させてもらいます。
しかし呼吸を整えているときに聞こえてきたのは、さらに気分が不快になる異音
――誰かがげえげえとえずく音だった。気の早い酔っ払いか、とそちらに目を向けると、一気に気分が晴れた。吐潟物が見えるし臭気も届いてくるが最高だ。

それはクルリだった。

気付けば身体が動いている。
彼女ははっと顔を上げ、胸元のペンダントを咥えてナイフを取り出すが―遅い。
昼間の速度が嘘のように思えるほど動きにキレがない。苦もなく彼女の両手首を掴み、まさに暴行魔のように壁に押しつけることに成功する。
「くっ……」
「幸運ですねえ。早速聞かせてもらいましよう―あの男、アビスはどこに?」
「お、教えるか、無能野郎……」
「無能なのはあなたですよ。こんな簡単に捕まっちゃって」
その言葉が何かの琴線に触れたか、クルリの顔が僅かに歪む。いい気味だ、と思いながら顔を寄せていった。眼鏡が当たりそうな距離で瞳を覗き込む。
困った。自分の奥底から湧き上がってくる黒い衝動が、止められない。
「そう。困りました。本音を言えばあなたじゃなくて、アビスを見つけたかったんですけど」
「じゃあ外れだ。自分で捜せよ」
面白いことを言う。鼻と鼻を掠めさせて、さらに顔を近付ける。
彼女の耳に息を吹きかけるようにして、その耳朶に直に言葉を届かせた。
「あら。じゃあ、つまり―」
囁く、囁く。
優しく優しく、囁いてあげる。
その柔らかな耳に、ぺろりと舌を這わせながら。

「小娘よ―では貴様はこう言っておるのかえ? 自分は何の益にもならぬ虜囚故、妾がその身を憂さ晴らしに使うたところで誰からも文句は出んと?」

「なっ……」
「おうおう不運よなぁ。妾はあの男さ討ち果たせれば満ち足りたものを―間違うて出会うてしもたばかりに。無様に小便を漏らしても良いぞ、良いそ、ああ良いぞ。じゃが、せめて豚のような悲鳴をあげて妾を愉しませいな?」
ゆっくりとゆっくりと顔を持ち上げ、再び哀れな娘と哀れな視線を味わい、そして、くすりと笑いながら、
「―ビビリすぎです!」
彼女の額に渾身の頭突きを叩き込んだ。

C3 シーキューブ〈4〉 (電撃文庫)です。連発です。
春亮くん、記憶消されちゃいましたねぇ……
皆のこと忘れちゃいましたねぇ……
村正このはちゃん(巨乳)切れてますねぇ……
さぁどうする!!
って、ちゃんと巻内で解決してくれてるんですけどね。

無駄に引っ張られるとたまんない(><)
以下続刊でもう数年待ってるのもあるしね。

さぁ、新キャラ「不思議ちゃん?」と「金髪ツインテちゃん」登場です。
もうね、なんてんだろ?悔しいぐらいにツボを押さえられてます。
両手を挙げて\(=ω=.)/ こんな感じです。
ロリに黒髪に委員長に巨乳にメイドにツンデレ(デレ分は?)と来て、不思議ちゃんと金髪ツインテ!!
次は何なんだよ!
 

         (ライトノベル)

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まともな人間のどこが面白い

googleさんが居るこのページでは
貼れないストーリーをこっちでやってます。
18歳以上の方向け……。
こそっと萌えようぜ

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迷い猫拾いました
大事に育ててくれますか?
え※ち猫オーバーにゃん!
拾った迷い猫と※なことをするCG集です。

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