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インフィニティ・ゼロ~冬 white snow (電撃文庫)
著者:有沢まみず
イラスト:にのみやはじめ

ある寒い日のこと、俺は街の公園で不思議な少女と出会った。レイと名乗るその子は、死んでしまった猫を胸に抱き、言っていることは意味不明なことばかり。
これは関わらない方が身のためと、そっと俺は逃げだそうとしたが、いつの間にか相手のペースに巻き込まれ……。
だが、この少女、実は千年の間、闇に毒く異形のモノ達を浄化してきた一族の巫女だったのだ。神を降ろし退魔を行う唯一の存在一しかし、そのために少女が払う代償は……。
おかしくも悲しくせつない物語


Aさんもホシさんも、拳銃を持っていた男も既に中にいる。俺は素早く状況を見て取った。
何時の間にかサトーさんの姿は消えていて、代わりにまた、芋虫どもが壁から滲み出していた。
俺は彼の言う通り、ぜロを抱え上げようとして。
ずるりと足を滑らせた。
床が芋虫の体液でぐしょぐしょだった上に、俺自身も相当、体力を消耗していたからだ。俺は引き攣った笑いを浮かべながら、彼女をもう一度、抱き起こそうと手を伸ばし。そして、悲鳴を聞いた。
集まり出した芋虫どもがもぞもぞとエレベーターの方に向かって、這い出していた。悲鳴を上げたのはAさんだった。彼は錯乱しきって、叫ぶ。
「そんな蛇の仲間、置いていけ!早く扉を閉めろっ!いいから、閉めろっ!」
よれよれコートは怒った。
「な、馬鹿を言うな!」
「なにい?」
「貴様は馬鹿だと言ったんだっ!大人しくそこで震えてろっ!」
よれよれコートが怒鳴り返す。Aさんは沈黙した。誇りを傷つけられたような表情が、やがて、異常な笑みに取って代わる。
何時の間にか彼の手には拳銃が握られていた。
その手がゆっくりとよれよれコートに向けられる。彼も、俺も、ゼロも凍ったまま身動き一つできなかった。
ばん。
乾いた破裂音が辺りの空気を震わせ、よれよれコートは血の滲み始めた腿を押さえて倒れ込んだ。苦悶のうめき声を上げる彼を跨ぐようにして、Aさんは開閉ボタンに手をかける。扉が閉まる最後の一瞬まで、Aさんは狂った笑いを浮かべていた。
「いっちゃった……」
ゼロがぽつりと眩いて、俺の手を握った。俺の身体が細波のように震えた。押し寄せてくる
強烈な感情で頭が真っ白になった。
「そっ、それが……お、お前の」
生涯で初めて経験する、絶望的なまでの怒り。
「それが命を賭けて、お前を守った者への礼儀か――?!」
俺は力一杯叫んで、床を拳で打ちつけた。
俺のささくれ立った心は、柔らかい手の温もりで抑えられた。ゼロが澱で濁った瞳を向け、笑いかけていた。
「ああ、やっぱり、りあさんだ」
彼女は動かない身体を懸命に寄せ、俺の手をぎゅっと握る。その力はあまりにも弱々しかった。
辛うじて俺が分かるのは、サトーさんの召還が中途半端だったためだろうか?
皮肉なことにそれ故、彼女の心は崩壊を免れたようだ。だが、ここは二十五階。エレベーターは行ってしまった。
俺は彼女を抱き寄せ、抱きかかえ、立ち上がった。
ここで次のエレベーターを待つべきだろうか?
表示されている階数は片側が九階と十七階と二十一階。反対側が八階と二十階が二つ。そのいずれも下に向かっている。Aさんという攻撃先を見失った芋虫はしばらく、うろうろしていたが、どうやら、俺達で我慢することにしたらしい。
汚らわしい潮となって、もうすぐ側まで押し寄せていた。
ダメだ。
ここでジッと戻ってくるあてもないエレベーターなんか待っていられない。俺は暗澹とした思いで、左右に目を走らせた。どうしたらいい?
なにか打つ手は?
ゼロの身体は羽毛のように軽かった。柔らかく華奢で、哀しい程に暖かかった。俺はぎゅっと彼女を抱きしめ、決意した。
少なくとも、この子だけは絶対に助けてみせる。彼女は、この状況がよく分かっていないのか。笑いながら、その小さな手を俺の胸に当てた。
「りあさん。わたし、ぽっぷこーんたべなければよかった。さとーさん、よべたからいいやってあまったのたべちゃったの」
俺は群がってくる芋虫を蹴散らし、後退して、
「いいさ。ポップコーンぐらい好きなだけ、食べるといいよ」
「でも、ぽっぷこーんあったら、さとーさん、もういちどよんで、りあさんをたすけてあげられるのにね」
俺ははっとしてゼロを見下ろした。よく見ると、その笑いは精一杯の泣き顔だった。彼女にも分かっているのだ。俺達が置かれた救いようのない状況を。身体中を叩きつけられて、さぞ痛いだろうに。
それでも、彼女は笑うのだ。
くそっと思った。
「いやしいこでごめんね」
「……なあ、ぜろ」
震える声で俺。彼女の着ているトレーナーの袖を引き伸ばし、手を隠す。皮膚の露出を最小限にする、せめてもの……。
「しばらく、目をつむっていてくれよ」
「きす?」
こんな時だというのに、その一言には笑ってしまった。
「うんにゃ。それは助かってからのお楽しみ。いくぞっ!」
と、かけ声をかけ、俺は彼女を抱えたまま、一気に芋虫の塊の中に足を踏み込んだ。顎をがちがちいわせながら群がってくる奴等にジーンズ越しに噛みつかれ、激痛が走った。
が。
構わず蹴散らし、踏み潰し、突き進む。毒々しい色をした芋虫の絨毯を駆け抜ける。目標は従業員用エレベーターホール。
そこまで、辿りつけばエレベーターは無理かもしれないけど、俺が上がってきた階段が使える。なんとか二十階まで下りて、カワタさんと合流するか、それより下でエレベーターを拾うことができれば、まだ、生き残るチャンスは出てくる。
ぽろぽろと芋虫が零れ落ちる壁の間を走り抜け、俺は従業員用のエレベーターホールに通じる扉の前まで辿りついた。
さっき俺が出ていった方と反対側の扉だ。しかし、そこにはご丁寧に、芋虫どもが特に密集して俺達を待ち受けていてくれた。
うじゃうじゃと蠢く汚らしいムシ。また、ムシ。
俺はごくりと唾を飲み込んでから、指先で摘むようにして取っ手を回し、勢いよく蹴り開けた。芋虫がぽたぽたと零れ、ぜロが俺の首に顔を埋めた。芋虫の崩落が一段落するのを待って、中に飛び込む。酷い。ダメだ。
絶望感が込み上げてくる。
俺が上がってきた階段には先程の何倍もの芋虫が層をなしていて、通り抜けられるような状況ではなかった。俺は救いを求めるように、従業員用のエレベーターに目を転じたが、同様。
今度はうめき声が出た。
芋虫が半開きになったドアの隙間からぞろぞろと這い出てくる。時折、漏電でもしているのか電気的な光と音がそこから零れ、ジュッとなにかが焦げる臭いがした。
きっと、操作盤かなにかにまで芋虫が入り込んでいるのだ。
その時、ゼロが俺の頬に震える手をかけた。
俺は彼女の視線を辿り、同じように震え出す。芋虫で埋まった階段を今、大きな黒い影がずるり、ずるりと這い上がってくる。その姿は間違えようもない。ムカデだった。それもただのムカデではない。
なんというか。
大きさも桁外れだったが、なにより。
あまりにも異常だった。
身体の各所から、木の幹に枝が生えるように別の身体が突き出ていて、その身体の節目にも更に別の小さな身体が生えている。
全体的に、大きな杉の木のような外形をして、それが、ぞわぞわぞわと風に騒ぐ木の葉のように毒き……。
一瞬、気が遠くなりかけるのをなんとか堪えて、俺は辺りを見回した。なにか、どこか、逃げ道を。

 

インフィニティ・ゼロ~冬 white snow (電撃文庫)です
有沢まみずさんのデビュー作です。いぬかみっ!やラッキーチャンスとは全く違ったモノです。
虫が苦手な人は背中が痒くなります。若干のグロ成分が配合されてます。
うへぇと言うほどでもないので安心してよめますです。
イラストと内容のギャップに萌を感じて下さい。


よれよれコート=Aさんをガードしていた男達のリーダー
Aさん    =なにかを証言しようとしてる人。敵対組織が居る。
さとーさん  =ホノカワヌシという名の神様
 



インフィニティ・ゼロ~冬 white snow (電撃文庫)
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