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みすぷり 2 (メガミ文庫)
著者:SOW
イラスト:駒都 えーじ

男の娘疑惑のプリンセス・ソアラの猛烈なアタックに振り回されっぱなしの元譲。
さらに皇国からはソアラも恐れる天然爆乳お嬢様・アルティスがやってきた。そしてソアラを狙う新たな刺客の影も…。
第1回メガミノベル大賞金賞+駒都えーじ賞受賞作品、波瀾万丈の第2巻。

天目坂高校の校舎の裏側にひっそりと立つ技術棟、その二階にある模型倶楽部の部室で、有坂光也は、夏と冬に二回行われるビッグイベントに出展する新作フィギュアの制作にいそしんでいた。
艦船や戦車・航空機、ガンガルならファーストから種、女の子モノなら美少女フィギュアからビスクドールまでこなす光也、今度の新作は子供向けヒーロー番組「リミテッドマン」に出てくるヒロインキャラ、「ラニーニャ」だった。
しかし「ラニーニャ」は入気キャラなので、他の造形師もテーマにしている。
せっかくなら差別化を図りたいと思うのは人情。
そこで、第14話のゲストキャラのゆかりが「ラニーニャ」のコスチュームを着ていたら、という設定で、半ばオリジナル作品として作ることにした。
公式設定集にも載っていないだけに、コスチュームの造形はともかく、ポージングなどに苦労した。

特にゆかりの髪型はベリーショートだから、うなじのラインのバランスが難しい。
「う~ん……なかなかうまくいかないなあ」
さすがにハードルを上げすぎたか、とわずかに後悔に近い感情が芽生えたが、すぐに
「いや、そこを乗り越えてこそ、自分を一段レベルアップさせることができる!」と、気合を入れる。
「はあ~」
というのに、部室の隅にいた元譲のため息が、入れたばかりの気合に水を差した。
「元譲……」
ここで「うるさい」とか「目ざわりだからどっか行け」とも言わないのが彼の優しい所である。
「家に帰らなくていいの?待ってるんじゃない、"二人とも"」
「だから……帰りたくないんだ……」
光也も元譲の身に起きたことのあらましは聞いている。
アルティスが転校してきて三日、すなわち、皇国の皇女様と公女様の二人が押し掛け女房を始めてから三日が経っていた。
(おもしろいくらいに衰弱しているなあ……)
元譲の目の下にはくまができ、頬はこけ、顔色は蒼白。

その有様を見て、申し訳ないとは思ったが「牡丹灯籠」だかなんだか、美女の幽霊に取り憑かれ精気を吸われた男の話を思い出した。
「光也……オレさ、なんか悪いことしたかな……確かに品行方正とは言わねえよ……でもよ……ここまでひどい目に遭うほどの悪行も重ねちゃいないと思うんだ……」
タ食時、ソアラが腕によりをかけて作った「これどこの宮廷晩餐会?」と問いたくなる豪華絢欄なメニューの数々。
「全部食べてくれるよね、もちろん」
有無を言わさぬ迫力があった。
子豚の丸焼きを完食するのは、十代の成長期食べざかりのボディでも辛かった。

入浴時、突如アルティスが入ってきた。
しかも、どこから入手したのかスクール水着(旧型)で。
平均的な日本人女子十代を基準に作られたそれでは、アルティスの規格外ボディを収めることなどできず、今にも張り裂けそうな胸元が「裸よりエロい」状態になっていた。
「お背中を流しますう~」と迫るアルティスを、前かがみになりながら追い出す。

深夜、ツッコミのしすぎで気が昂り眠れなくなり、水を飲もうと一階に降りると。
「あ」
リビングでロングコートを着た女が、電気も点けずに魚肉ソーセージを食べていた。
「失礼」
言い残して、次の瞬間には消え去っていた。
幽霊だと思い「おおおおおおっ!?」と思わず声を上げて、ついでにすっころび、挙句にタンスの角で小指を打った。
痛みに悶え苦しんでいると、ぴくぴくとこめかみをヒクつかせる妙が立っていた。
「夜中に騒ぐなって言ってんだこのウスラトンカチロ」
広島県名物「巨大しゃもじ」でぶん殴られた。
「元譲……三番目の魚肉ソーセージの人は何?」
「わからん!もしかしてオレの幻覚かも知れんが、どっちにしろ心身ともに追い詰められているのだけは確かだ……」

みすぷり 2 (メガミ文庫)です
男の娘?萌だけじゃないんです
バトルもあるんです。バトル。
爆乳お嬢様が活躍するんです。


みすぷり 2 (メガミ文庫)(ライトノベル)

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みすぷり! (メガミ文庫)
著者:SOW
イラスト:駒都えーじ

 ケンカ上等の高校生・夏河元譲。
彼のクラスにやってきた留学生・ソアラは、金髪碧眼の美少女で、さる国の王女様で、小学校の幼なじみで、そのうえ元譲にラブラブだった!
が、元譲はただただ驚愕するのみ。
なぜなら彼の知るソアラは、男だったはずだから!?
さらに、オトコノコ疑惑渦巻くお騒がせプリンセス・ソアラの周りには、ある陰謀の陰が…。


「妹さんカワイイねえ、げんじょにソックリだねえ」
性格まで似ていると言われる、大変不愉快な話だった。
もう中学生だというのに、あの可愛げのない性格で大丈夫だろうかと心配になる。
「生意気で兄を兄とも思わんクソガキだよ」
今日は熊の置物だからまだよかった。この前など、どこから持ってきたのかボーリングの玉を投げてきた。
すんでで気づいて避けたからよかったようなものを、なにを考えているんだか。
「お前さ、そんな格好してて、家族はなんも言わねーのか?親や兄弟泣いてんぞ?」
ふと、そんなことを思った。お国柄というのもあるのだろうが、息子が美少女になったら、どれだけ理解のある家庭でも家族会議は免れないだろう。
「ああ、それなら大丈夫だよ」
あまりにも小さすぎて気づかないものだった。小さすぎて、元譲は気づけなかった。
ソアラの目が、わずかにすぼめられたことを。
「ボクの両親死んでるし、弟や妹もいるんだかいないんだか、よく知らないし」
「え……?」
まるで、昨日の夕食のメニューを話すような、なんのことはない、自然な口調だった。
「飲む?オレンジ味のカルピスだよ?」
よどみない動きで、魔法ビンに入れてきたカルピスをコップに注ぐ。
溶けることを計算して氷も入れてきたのだろう、少し濃い目だった。
「ボクんちってさ、決まりごとがあってね、家を継げるのは男の子だけなんだ。でもさ、それじゃあ世継ぎがいなくなる可能性もあるでしょ?だから、おめかけさんって言うか、後宮みたいのがあるわけさ?」
別に珍しいことではない。
王族と言うものは、創始者を除けば、存在することに最大の意味がある。
「血」という権威を守護することだけが存在理由なのだ。
したがって、一夫多妻制ではない国でも、王族だけは特例として複数の妻を持つことは珍しくない。日本でも近代まで似たようなことは行われていた。
「腹違いの弟妹とか、いるんだかいないんだかわかんないのさ」
「でも……それでも兄弟なんだろ?会ったことくらいはあるだろ?」
「……げんじょ?ボクんちはね、暗殺と謀略が趣味みたいな一族なんだ。皇位継承の資格を有してるってだけで、嫌われる理由どころか、殺される理由としても十分なんだよ」
少しだけ、ソアラの口調は皮肉めいていた。
それが、平和な国で普通に兄弟げんかができる世界にいる元譲を揶揄したものなのか、それとも、自分がいる世界を蔑んだものなのかはわからない、とても複雑な表情だった。
「ボクが日本で小学校に通っていたのもそれが理由だよ。でも、そのころはまだマシだった。後ろ盾になってくれていた人がいたから、比較的平和に暮らせたんだけどね……」
ただし、それも十歳までだった。
後ろ盾が突如として失脚、帰国命令が下った。
「待っているのは確実な死……だから、ボクは一計を案じたんだ。それが、この格好さ」
皇位を継げるのが男子だけならば、女と欺けばいい。
「初めてこの格好になったときのことは今でも忘れられないよ……」
肩が震えている。
たとえどんな理由であったとしても、生まれもった性を否定されるというのは、決して軽い衝撃ではないだろう。
「……あ」
元譲はなぐさめの言葉を考えつつ、その肩に手を伸ばそうとした。

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