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縛られることに慣れ、いつの間にか浸かってた「ぬるい幸せ」になんか手を振ろう
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超自宅警備少女ちのり2 エクストリーム・エグザミネイション (GA文庫)
著者:小幡 休彌
イラスト:しゅー

「あたし、やっぱり帰ろうかなあ」
「くじけんの早えーーー!まだ学校まで半分も来てませんよ!」
瀧口譲は梅木家の超自宅警備少女ちのりとともに、学校へ向かっていた。
天才のちのりといえども定期試験を無視するわけにはいかないからだ。
登校中、早速ぐずりはじめるちのりをなだめすかす譲。そう、譲の受難の日々はまだまだ続いているのだ。
そんな中、巨乳のボランティア講師シスター・プリンによる家庭訪問によって、ちのりのテンションは一気にヒートアップ!
だがそのシスターにもなんだか思惑があるようで……?
はた迷惑なヒキコモリ少女がひきおこすドタバタコメディー第2弾!


 いつもは混み合う朝の女子トイレも、今日ばかりは地の利の貸し切り状態。
のんびりと用をすませたちのりは、手洗い場でふと、人の気配を感じて顔を上げた。
鏡の中に見慣れた美しい顔があった。
シスター・プリンだった。
「おはようございます、チノリさん」
「あっ、ルゥルゥだ。おはよー」
ちのりは笑いかけながらも、小首をかしげる。
「今日はなんで学校にいんの?」
「もちろん、あなたに会うためですよ」
「へ?」
シスターの背後から、細く黒い触手がしゅるしゅると伸びた。触手はたちまちちのりの顔をぐるぐる巻きにし、その目と口をふさいだ。

 むぐう?目を開けたのに、なんにも見えない。声も出せない。
ちのりは身じろぎしたが、体はぴくりとも動かせなかった。どうやら目隠し、さるぐつわをされて、椅子に縛り付けられているようだ。少しすると、手足をきりきりと戒めている縄の感触がわかってきた。
今、どこにいるのかもわからなかった。わかるのはただ、鼻のまわりがやけにムズムズすること。意識を失う前に、何かの粉を吸わされたことはなんとなく覚えている。苦い、乾いたカビみたいな、イヤな匂いの粉だ。
その粉のせいか、どうも頭がぼんやりする。でも、なんだかちょっと、いい気分でもある。
「あら、もう気がついたのかしら?」
顔のそばで、シスターの甘い声がした。「ルゥルゥ」と呼びかけようとしたけれど、口に布をかまされているので、「ぐうぐう」というくぐもった声しか出なかった。
んもう、ルゥルゥったら、朝かち緊縛プレイなんて激しすぎ。
しかも学校でなんて、インモラル感倍増。やだ、これから追試なのにい。ああでも、こうやって全身縛られるのって、キライじゃないかも。なんだか、新しい可能性に目覚めそう。くふふ、くふふ。
「ねえ、この子、ヨダレだくだくで笑ってるけど、大丈夫かしら?」
シスターが言った。どうにもここには他にも誰かいるようだ。声変わり前の少年のような澄んだ声が応えた。
「没薬の効果やろ。はるかエジプトはネフレン=カの墓所深くから持ち出した神秘の粉や。あれだけ吸うたら、そこらの女子高生なんぞたちまち人事不省のラリパッパや」
んもう、あたしをこんなに縛り上げておいて、放置してお喋りしてるなんて、ルゥルゥひどい。ちのりは思った。
あっ、でも、こんな風にないがしろにされて放置っていうのも、けっこうクるわ。
そんなみじめな自分にゾクゾクきちゃう、根っからどMなちのり十七歳。

「ねえ、この子、ひとりでビクンビクン震え始めたけど……何かの副作用じゃない?」
少し心配そうに、シスターはもう一人の人物に尋ねる。声はうっとうしげに言う。
「そんなことはないやろ。だいたい別に副作用でもええやんけ。どうせこいつも、しまいにはイケニエや。ええから早く儀式始めんかい」
「だって、こんな風にケイレンしてたら気になって集中できないわ」
「邪魔くさいのお。気になるんやったらさるぐつわ取ったりいな」
口に押し込まれていた布が外され、目隠しもほどかれた。ちのりはそっと目を開けた。
そこは空き教室だった。視界はぼやけているが、どうやら数日前に迷い込んだ、旧書道教室のようだ。ただ、窓には黒いカーテンが引かれていて、中はひどく暗い。灯りは、ちのりの周囲の何本かのロウソクだけだ。
その教室の、本当なら教卓があるあたり。そこに置かれた椅子に、ちのりは縄で縛り付けられているのだった。
ちのりの目の前には、シスターらしい人と、その足下に、何か黒い小さな生き物がいた。パグ犬ほどの大きさの怪生物が、不敵に笑った。
「くっくっくつ、わしの姿を見てびっくらこいたようやな」
ちのりは目を細めてそちらを凝視するが、びっくらこいてはいない。
「眼鏡がないから、よく見えらい」
「チッ。なんや、いちいち難儀な娘やな。おい、眼鏡返したれ」
シスターが外れていた眼鏡をかけてくれる。ちのりの視界が、やっと明瞭になる。
「どや、ちょっとはたまげたか」
キノコのような、クラゲのような、うねる触手をもった奇怪な生物が、ぷくっと軽く体をふくらませる。胸を張っているつもりらしい。
ちのりは眉一つ動かさず、ただ
「ああ」
と言っただけだった。黒い生き物はムキになって怒鳴り散らした。
「おい!感動うっすいな自分!わしの姿よう見てみ!めっちゃ黒いやろ!触手めっちゃキモイやろ!ほてから日本語ぺらぺらしゃべってんねん!いくらラリパッパになっててもビックリするやろ普通!人知を超えたコズミックホラー感じるやろ!キャー言うやろ普通!お前脳みそどうなってんねん!」
「うむふぅー、あらし、異次元の生物とか見慣れてっからさあ」
あやしい呂律で、ちのりは言った。それから、首をシスターの方にめぐらせる。
「うわあ、ルゥルゥ!すごーい!」
こちらには素直に目を見張る。シスター・プリンのいでたちは、いつもとまるで違っていたからだ。
頭をすっぽり覆うフードの付いた長い黒いマント。そしてその合わせ目からのぞく衣装は、スキンタイトな黒のレザースーツだった。深い深い胸の谷間も、膝の上まであるロングブーツの上に露出している大腿部も、なんとも扇情的だった。フードの中からは、豊かな金髪があふれ出している。そして手には、やたらと大きくて分厚い本を抱えていた。
「ねえねえそのコス、自作?素材ろこで買ったの?オカドヤ?超エローい。鼻血ぶーだよ」
「コッ、コスプレじゃないわっ!これは儀式のための正式な装束よ!」
「儀式?」
シスターはフードをはね上げて顔を見せると、クックッと笑ってみせる。
「そうよ。太古に封印された、偉大なる異界の神を召喚する儀式。わたくしはその巫女の役を父祖から伝えられたる偉大な魔道師。そしてこれにあるは、《旧支配者》の先触れにして我が朋輩、ニョグタンよ」
ニョグタンと呼ばれた黒い生き物が、ぴるぴると触手を振った。
「そおいうこっちゃ」
ちのりは信じられない、という顔で、じっとシスターを見つめていた。
「……ひとつ、聞いてもいい?」
「何かしら」
「さっきトイレでは普通のカッコだったけど、そのばっつばつの女王様スーツ、わざわざ着替えたの?そこらの物陰かどっかで?ごそごそって?いやーんルゥルゥったらもうこのエロス番長!」
そう言ってキャキャキャと笑い出すちのり。真っ赤になったシスターは涙目で歯を食いしばり、ちのりをぶん殴ろうと、手にした巨大な書物を振りかぶった。慌ててニョグタンが触手を伸ばしてシスターの腕を押さえつける。


超自宅警備少女ちのり2 エクストリーム・エグザミネイション (GA文庫)です
引きこもりオタクな自宅警備員ちのりちゃんのドデカヘロンピーーンチ!です
外は危険がいっぱいです


超自宅警備少女ちのり2 エクストリーム・エグザミネイション (GA文庫)

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