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大沢さんに好かれたい
著者:桑島由一
イラスト:放電映像

僕はヒーローになんか、なりたくなかった。
ただ、大沢さんのそばにいたかった。僕が大沢さんのことを好きだと言ったら迷惑かな?
きっと迷惑だよね……。
地味でおとなしい大地守が“正義のヒーロー”に大抜擢。
女子生徒の人気の的となり、学園のアイドルさえも彼に夢中。
しかし、歪んでいく日常の中、愛しの大沢さんとの距離は少しずつ離れていく。
「信じてる、でもおもいがこぼれちゃいそう」


俺の前のヒーローは、戦いが嫌で逃げたんじゃない。俺と同じように真実を知って逃げ出したんだ。
俺はヒーローだったんだ。誰もが俺を応援してくれたんだ。俺のことを好きだって言ってくれる人がいたんだ。
それなのに、どうしてこうなってしまったんだ 

『kに指示して。校舎を死守。以上』
『指示はいらない。聞こえている』
今度はカナの声が腕時計から聞こえる。
『聞いているか、大地』
俺は返事をせずに、カナの声に耳を傾けた。
『私はお前を守る。死んでもだ。なぜなら』
なせなら?
『それがKの命令だからだ。それに』
それに?
『お前のことが嫌いじゃないからな』
そして一瞬の間。
『……お前に守りたい人はいないのか?いるなら出てこい。以上だ』
校庭から爆発音が連続して聞こえた。俺はそれでも動かない。
教室からも悲鳴も聞こえる。それでも俺は動かない。あの少女の顔が頭から離れない。
寂しいと繰り返す唇が忘れられない。トントン。ドアがノックされた。
「入ってますか?」
女の子の声だった。心地よく心に染みこむ、不思議な声。
「ヒーロー、みんなを助けて」
「ダメだ、それはできない。俺はもうヒーローじゃない」
「『俺』なんて言ってるからでしょ?『僕』のくせに」
彼女はクスクスと笑った。
「飛鳥さんも心配してるよ」
「彼女は俺のことなんてもう興味ない」
「そんなことないよ。うまく気持ちを伝えられないだけ。本当だよ」
「嘘だ。そんなの嘘だ。」
「ヒーロー。色々と辛いこともあるだろうけど、みんなを守ろう。あなたが出てこないなら、飛鳥さんはわたしが守るよ」
「君は、何も知らないんだ。僕が悩んでることも、なにも」
うん。わからない。でも、大変そうなのはわかる。だって、いつも応援してたから。
あなたにも辛いことはあると思う。だけど、一番大切なのは何?
あなたが守らなくちゃいけないものは何?今は飛鳥さんでしょ?だったらあなたは彼女を守らないとね。
そのために何かが犠牲になっても仕方ないよ。だって世の中、そんなにうまくいくわけないもの。
誰かが嬉しい時、誰かが悲しいんだよ。
「そんな簡単に割り切れないよ」
そんなの私だって同じだよ。悲しいし、辛いよ。でもね、負けちゃいけないの。
そうだ、私のヒーローの話をしてあげる。私は子供の頃に、ヒーローに助けてもらったの。
犬が道を塞いでいて、歩けなかったんだ。でも私のヒーローは、勇気を出して助けてくれたんだよ。
そうだなぁ、小学校の時だったかな。私はそれから彼のことをずっと忘れられないで生きてきた。
中学に入って彼と一緒の学校になったんだよ。同じ図書委員になって、たまにすれ違うだけでもドキドキした。彼ってば優しくて、とっても素敵なの。高校に入ってからは毎日一緒にいるようになった。同じクラスにもなれたしね。すごく幸せだった。
彼は自分のことヒーローなんて思ってないんだよ。あんなに勇敢に私のこと助けてくれたのに、まるっきり忘れちゃったみたい。
それから……信じられないだろうけど、彼は本物のヒーローになっちゃったんだ。みんなのヒーロー。
もう私だけのものじゃなくなった。かわいい恋人もできたし。
幸せそう。なのに今。困ってるみたいなの。だから私が彼を助けるの。だって、助けてもらったんだもの。
お返ししなくちゃね。だから今、彼の大切なものを守るの。飛鳥さんは、任せておいてね。
私の大好きな守くん。
「僕の大切なものは……僕の大切なものは……」
それっきり声はしなくなった。僕は声を出して泣き、腕時計を何度も壁に叩き付けた。
僕の腕は壁にぶつかって赤紫に変色している。その中で小さな絆創膏だけが妙に目についた。
腕時計からカナの声が小さく聞こえてくる。
『大地、限界だ』
そして校舎が揺れた。多くの悲鳴。
『今の音、あなたの教室よ』
小泉さんは事実だけを伝えた。僕は立ち上がってドアを蹴破り、廊下を走った。
一番近い教室に飛び込むと、校庭へと跳んだ。校庭の真ん中では、カナが頭から血を流して倒れていた。
「カナ!!」
「……ずいぶんと遅かったな。私の怪我は大したことない。それより、あれだ」
彼女が指さすと、校舎の壁に巨大なネジがへばりついていた。
ネジは僕のクラスの窓に突っ込み、一部の壁を破壊している。
「こっちを見ろ!!僕はここだぁ!!」
ネジは僕に気づくと回転しながらドリルのように飛んできた。
僕は一歩前に踏み出して、それを指一本で受け止める。
ネジは回転を速め、僕の指を貫こうとした。煙が指先から上がり、燃え上がりそうな熱を感じる。
「おりゃあああああああああ!!」
僕はネジを掴んで回転を止め、そのまま地面に叩き付けた。
馬乗りになって中心を見つけるとそこに手を思い切り突っ込む。
ゴリっとした塊を掴むと、空に向かって全力で放り投げた。
塊は二つに分かれ、ひとつはどこかに飛んでいった。もうひとつはネジに吸い込まれていく。
「小泉さん、はやく救急車を呼んで!まだ生きてるはずだから!」
「救急車は無理だけど、うちのラボに運んでおくわ。大至急ね」
ネジの中から長身の男が現れ、彼はワゴン車に収容された。
ワゴン車が校庭から出ていくのと入れ替わりに救急車がやってきた。
「あれ?なんで救急車?」
「教室の生徒に負傷者が出たのよ。うちの管理している病院に連れて行くわ」
腕時計から誰かの声が聞こえてくる
『負傷者は女子生徒一名。呼吸はしていますが意識がありません。クラスメイトをかばって頭を激しく打った様子です。名前は大沢―』



「ヒーローなんていらないわあなたが一番誰よりも好きよ」と言う歌詞を思い出した

大沢さんに好かれたい。 (角川スニーカー文庫)

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