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生徒会の四散 碧陽学園生徒会議事録
著者:葵せきな
イラスト:狗神煌

 

私立碧陽学園生徒会室―そこは、選ばれし者だけが入室を許される聖域にして楽園(かどうか最近微妙)。
思わせぶりなタイトルでお届けする、長編第4巻。やっべ、ついに来ちゃった?ライトノベル的展開!会長がツチノコを探してみたり。
杉崎がプロポーズしてみたり。真冬のポジションが杉崎レベルにまで堕ちてきたり。うん、見事なまでにいつも通りだね!
と思っている君、刻の涙を見ちゃうかもよ?
 
碧陽学園生徒会議事録4
 

「というわけで、生徒会にも、破滅を」
「やっぱりラスボスだ!」
会長がぶるぶる震えていた。……このシリーズで最終的にどうにかすべきなのは、知弦さんなのかもしれない。最初から身内に黒幕が潜んでいたなんて……。
知弦さんは、ニィっと、口の端を釣り上げる。
次の巻で、生徒会メンバーが、まず一人欠けるわ
『!』
生徒会室に緊張が走る。会長が、恐る恐る、訊ねた。
「それは……誰か、やめちゃうってこと」
「ああ、そういう生温いことじゃないわね」
『!』
ぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶる。
「い、一体、だ、誰が……」
「それは言わないわよ。誰が死ぬか分からないからこそ、盛り上がるんじゃない」
「死ぬっって言っちゃった!言っちゃったよ!」
「あ。……誰が欠けるか分からないからこそ、盛り上がるんじゃない」
「言い直しても駄目だよ!」
「そして、犯人は一体何者なのか。疑心暗鬼に陥る生徒会」
「確実に知弦だよ!怪しさ二百パーセントだよ!」
「女だけになってしまった生徒会で、女同士のドロドロした執念がぶつかる」
「俺かあああああああああ!被害者俺かあああああああああああ!」
酷いネタばれ&犯行予告&死刑宣告を喰らった。
皆が俺に同情的な視線を向ける。俺はしくしく泣きながら、画用紙に「第一の被害者」と記して、胸に貼り付けた。……皆、いたたまれなくなったのか、俺から……被害者から目を逸らす。……うう。
知弦さんはぼかすのを諦めたのか、本格的に物語り始めた。
「さて、この時点で『生徒会』としては、もう若干崩壊気味よね」
「破滅の始まりだ……」
深夏が、世紀末漫画みたいなセリフを眩いていた。
「そこに加えて、キー君の死因が、謎の感染症」
『!』
症状は、体中の毛穴からにょろにょろ……」
「にょ、にょろにょろ?」
「……いえ、これ以上はちょっと、ね」
「俺、どんな死に方したんだあああああああああああー」
すっこいいやな最後なのは、確かなようだ。
「キー君の死体は国の研究施設に運び込まれ、対策が検討されるも、時既に遅し。日本には次なる感染者が……」
「俺、なんか最悪だあ!」
死後も他人に迷惑かけまくりだった。
「そうして、碧陽学園でも、にょろにょうにょろにょろ……」
「ですから、なんなんですか、そのにょろにょろって!」
真冬ちゃんは涙目だ。
「そんな矢先、生徒会室から見つかる、謎の液体が入った注射器」
「ま、まさかっ!」
「そう。それは、その感染症を発生させた、そもそもの元凶」
「は、犯人はこの中にいるっ!っていうか、知弦!」
「しかし、にょろにょろで死ぬ私。腕には注射の痕。そして、抵抗して暴れた痕跡」
『!』
は、犯人は知弦さんじゃないだと!?俺は、慌てて画用紙に「第二の被害者」と記して、知弦さんに手渡す。知弦さんが胸にぺたりとそれを貼る。物語は急展開だ!
「は、犯人は……真冬達の中に……」
ごくりと唾を飲み込む、会長と椎名姉妹。
最早、生徒会室は完全に知弦さんのテリトリーだった。
「そんな中、遂に海外にまで飛び火するにょろにょろ」
「にょろにょろ……なんてこと……」
「生徒会室では、疑心暗鬼の末、遂に最悪の事態に」
「さ、最悪って……」
「真冬ちゃんが、深夏をナイフで……。……うう」
泣き真似をする知弦さん。深夏が、がたんと椅チを鳴らして、よろよろと立ち上がった。
「真冬……そんな……」
「お姉ちゃん……ごめんなさい……」
「あたし達……真の絆で結ばれた、唯一無二の姉妹じゃ……なかったのかよ……」
なぜか、実際に刺されたわけでもないのに、腹を押さえて膝をつく深夏。
真冬ちゃんは……しかし、恐ろしく冷たい目で深夏を見下ろしていた。
「結局信じられるのは、真冬自身だけなんだよ。お姉ちゃん。ふふふ」
「ま……ふ、ゆ」
がくり。俺は倒れた深夏の背に、「第三の被害者」と書いた画用紙をぺたりと貼り付ける。皆、意外とノリノリだった。さて、いよいよ事態はクライマックスだ。
「遂に世界中に広まり、最早収拾のつかないところまで広まったにょろにょろ」
「ああ、人類が……にょろにょろで滅んでいく……」
「もう破滅の未来は免れない。唯一の希望は……犯人を見つけ、その人物が薬を持っていることを期待するのみ。しかし、もう、警察機構は崩壊、誰もそんなことをしている余裕はない」
「全ては……私達生徒会役員に託されてしまうわけね」
「あれ?でも、残っているのは……」
真冬ちゃんがそう気付いたところで、知弦さんの目が暗く光る。
「そう、二人。そして、よく考えて。真冬ちゃんは、なぜ最愛の姉である深夏を刺すに至ったのか」
「!は、犯人と疑ったからです!にょろにょろ発生の!つまり真冬も真犯人ではないっ…だったらもう―」
真冬ちゃんがハッと顔を上げる。その瞬間……会長が、ニヤリと、微笑んだ。
「くくくくく……」
笑う会長。実に不気味だ。完全に、自分に与えられた役に入り込んでいる。
そして、顔をバッと上げて、遂に彼女が正体を現す!
「ははははははは!そう!私こそが、世界を破滅に追い込んだ張本人、にょろにょろマスー」
「と見せかけて、にょろにょろで死んじゃうアカちゃん」
「にゃっ!?」
フェイクだった。会長が呆然とする中、俺は画用紙に「第四の被害者」と書いて、ぺったんこの胸に貼り付けよう……として殴られ、仕方ないので、手渡す。
会長がぺたぺたと胸にそれを貼ったところで、語られる結末。
「つまり、犯人は……」
「ま、真冬だったのですね!真冬が、にょろにょろを振りまいた真の」
「真冬ちゃんがそう悟った瞬間、しかし、真冬ちゃんの体からもにょろにょろが!」
『!』

 

 

にょろにょろって何だよ。体中の毛穴からそんなもん出てきたら泣くぞ……

生徒会の四散 碧陽学園生徒会議事録4 (富士見ファンタジア文庫)             (ライトノベル)

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