この世界からはみ出して翔ぼうはにかみトライアングル

最近ついてない事が多い高校生・水上弘司は、幼馴染みの占いを信じて“困ってるもの”に手を差し伸べる。
しかし、助けた仔ネコにはひっかかれ噛みつかれ、募金箱には間違って一万円札を入れ、桜の木の傍ではゴミ拾い中に痴漢に間違えられたりと、以前よりも散々な目に遭ってしまう。
でも、その夜、トリプル赤面ラブコメディは、突然にやってきて――!?

「……起きよう」
まぁ朝からそんなネガティブな事ばかり考えているのもいい若者としてどうか思う。
きょうもこれから学園もあることだし……と気分を切り替えて、弘司がのっそりとベッドから身体を起こしかけたその時。
むにゅ。
何か柔らかいモノが当たる感触がしたまるで抱き枕みたいにふんわりとした感触。おまけにいい匂いがする。気持ちよかったのでそのまま抱きしめてみると、その何かは「うにゃ」っと妙な声を上げた。
「……？」
何だろこれ……と寝ぼけまなこでそっちを見た弘司のめに映ったモノは―
「んにゅ……ヒロ。おはよ」
ネコマタ娘だった。
さわり心地の良さそうなミミとシッポをぴこぴこと動かしながら、眠そうな声で挨拶する。
「―！？」
一気に目が覚めました。
それまで半覚醒に過ぎなかった弘司の脳みそが、全自動食器洗い機のごとくフルスピードで回転を始める。
とするとこの左手の先にあるふにふにと柔らかいものは……
「ヒ、ヒロ……そんなところ触っちゃダメ。や……」
「わ、わぁっ！ご、ごめん！」悩ましげなネコマタ娘の声に身体を引くと、
もにょっ。
今度は右腕に、更に弾力があるモノが触れた。
「！？」
「ん～……もう朝なんですか～。まだ眠いです～」
霊鳥お姉さんだった。
肌着一枚（それも帯が取れて胸元が大きくはだけている）という青少年にはあまりに刺激的過ぎる恰好で、ぼけぼけとした視線を宙に漂わせている。
「す、すすすいませんっ」
慌てて離れようとするが、しかし反対方向……すなわち左手方向にはすでにネコマタ娘がいる。
よくみるとこっちもこっちで、大きめのTシャツ一枚をパジャマ代わりに着ているのみいう、思わず心臓がリンボーダンスでも始めてしまいそうなきわどい姿だったりする。
「○△％★＃！？」
弘司は焦った。
浮気現場をパトロンに発見されたヒモ男のように、超焦りまくった。
右も左もダメ。
こうなったらもう残るは上しかない。
そんな意味不明かつ錯乱した判断を下した弘司はベッドの上に起き上がろうとして。
ぷにゃっ。
毛布の下、腰の辺りになにか柔らかい感触を感じた。
「！？」
「むぅ……五月蠅いぞ。落ち着いて眠っていられんではないか……」
毛布をめくってみると、そこには髪をほどいた神様幼女が、コアラのように弘司の身体にしがみついていた。