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生徒会ばーさす!~お嬢様学園の暴君~ (集英社スーパーダッシュ文庫)
著者:番棚 葵
イラスト:宮坂みゆ
 
あたしが法律、あたしが正義、あたしが神なのよ!
お嬢様学校・白姫学園の生徒会長・天井院神菜は、圧倒的な美貌と絶対的な権力で、学園に君臨していた。ある日、その白姫学園に男子生徒たちが転入してくる。名門女子校に入れることで喜び勇む男子だが、神菜が彼らに告げたのは、女子と同じ制服で学園生活を送れという理不尽な命令だった!横暴に立ち上がる男たち。その先頭に立った紫藤水樹は極悪非道な作戦を立てて、生徒会に勝いを挑む! プライドを懸けた待ったナシの真剣勝負、のはずが、実は神菜と水樹にはある関係があり…。

 
「ほう、これが三日後に行うかくれんぼのルールとやらか」
同じ頃、生徒会室にて。
綺麗に紙に清書された文字を見て、かもめが感心した声をあげた。
ちなみに一般的な生徒会役員は滅多にここを訪れない。何か特別な用件がある時くらいだ。
この部屋をおおっぴらに利用できるのは、生徒会長と副会長と書記だけである。
その内の一人たる書記、つまり葉月がにっこり微笑みながら、今自分が手渡したばかりの紙を指し示した。
「はい、ルールは絶対厳守。破った時点で敗北となりますので、かもめ先輩もよく読んでおいてくださいね」
「ふむふむ」
その言葉にうなずきながら、かもめは字面を目で追っていく。
それによると、かくれんぼのルールは以下の通りになる。
・勝負は三日後の朝七時から
・男子生徒二十人と女子生徒二十人の対決
・隠れるのは男子生徒側。隠れる前に女子生徒は目をつぶって百数える
・隠れる範囲は学園内限定とする
・三時間以内に男子生徒全員を見つけられれば女子生徒側の勝利
・一人でも見つからなければ男子生徒側の勝利
・開催日前日に下準備は可能とする

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「さて、これで男子は全員捕まったわね。ルール通り、女子生徒側の勝利ということで……」
「ちょっと待てよ、神菜」
あくまでふてくされた表情で、水樹がつぶやく。
「お前、数も数えられないのか?」
「え?」
言われて、神菜は改めて目の前の男子生徒を数えてみる。
十九人だった。
「あら、本当。1人足りないわね……でも、それも時間の問題と言ったはずよ」
「さて、それはどうかな。勝負は最後までわからないぜ?」
「何よ、大げさね。たった一人じゃない。すぐに見つけてみせるわよ」
ところが、である。
それから十分以上が過ぎたが、その残る一人は見つからなかった。
とうとう残り時間が五分を切り、神菜の表情に焦燥の色が浮かぶ。
「どうして……ちょっと、A班!まだ最後の一人は見つからないの?」
『申し訳ございません、見つかりません!』
携帯の向こうから、疲労の交じった女子生徒の声が届いた。
『機動隊の方も見つけられていないようで、どこにいるのかさっぱり……』
「……っ!」
神菜は、ぎらりっ、と水樹をにらみつける。
「水樹、どういうことなの!最後の一人をどこに隠したのよ、きりきり吐きなさい!」
「それを教えちゃ勝負にならんだろ。お前、敵に負けてもらって嬉しいのか?」
「く、くっ……!」
その言葉は痛恨だった。神菜は顔を歪ませ、いらいらと教鞭をもてあそぶ。
「お、おい、大丈夫なのか?」
「さ、さあ……わたしもこれで勝負は決まったと思っていたのですが」
かもめと葉月も、かなり動揺しているようだ。自分達もどこかへ探しに行くべきか、悩んでいる。だが、この広い敷地内のどこに当たりをつければいいというのだろう。
そうこうしている間にも、時間は一秒二秒と経っていき、そして……

「し、試合終了です!」
葉月が無念の声を上げた。
結局、最後の一人は見つからなかったのだ。
「そ、そんな……生徒会が、男子生徒に負けた?」
女子生徒達の中に、ざわざわ、と動揺が広がる。
かもめも、信じられないとばかりに、かぶりを振っていた。
神菜は一人、気丈な表情を崩さずにいたが、やがて水樹をにらみつけると、
「……もういいでしょう、水樹。最後の一人はどこに隠したのよ」
その悔しそうな声に水樹は、ニヤリ、と笑った。
「わかった、教えてやるよ出てきな、芹沢」
その言葉に。男子生徒を捜索していた女子生徒の一群の中から、一人の生徒が進み出た。
頭と胸元に手をやると、何かをはぎ取る。
それは、ロソグヘアのヴィックと、布で作った詰め物だった。
「「あああああああっ!」」
「あ、あははは」
全員が絶叫を上げる中、あまり嬉しくなさそうな声で、その生徒……芹沢は笑った。
「誰にも内緒で、芹沢には途中から女装してもらっていたんだよ。女子生徒側に紛れてもらうためにな」
「そ、そんな……こんな初歩的な策に引っかかるなんて!」
わなわなと震えて膝をつく神菜を、水樹が立ち上がって見下ろす。
「普通なら、少し考えればその可能性は思いつくんだろうけどな。オレが『自衛隊を禁止』って言ったから、お前らそこに執着したんだろ」

「……バカな、最初からそこまで読んでいたというのか!」
かもめが驚きの声を上げ、葉月が悔しそうに爪をかんだ。
「くっ、最初から気づくべきでしたね……かくれんぼの参加者が二十人と多目だったのも、こちらが顔見知りの生徒会役員だけになることを避けるためだったんですね?まがい物の女子生徒を紛れ込ませるために」
「ま、そういうことだ」
水樹は満足そうにうなずくと、ふと這いつくばる神菜の肩に、優しく手を置いた、
「そういうわけで、だ。神菜……」
「え……」
「……はい、お前の負け!まずはオレ達の一勝だな、ざまあ見やがれ!」
げらげらげら、と笑ってみせる。
その底意地の悪い笑みを見て、男子女子を問わず生徒全員が、「うわあ」という顔つきになった。
神菜の頬が、みるみる真っ赤に染まっていく。もちろん、怒りのためだ。
心なしか、目の端にうっすらと涙まで浮かんでいた。
「認めない……こんなの認めないわ!このあたしが、こんな単純な策で負けるなんて!」
「だけど、事実は事実だ。認めざるを得ないだろ?」
「で、でも……!」
なおも水樹に食い下がる神菜の前に、ふと、何かが突き出された。
かもめの木刀と、葉月の扇である。
「神菜、負けは負けだ。潔く認めなければ、他の生徒に示しがつかん」
「お姉様、まだ勝負は二本残っています。ここは耐えてください」
神菜はその言葉に唇を噛んでいたが、やがて、ふっと、全身の力を抜くと、毅然とした表情に戻り、教鞭を水樹に突きつけた。
「わかったわ……水樹、今回はあたし達の負けよ。でも、次は絶対に勝ってみせるから、覚えておきなさい!」
そして颯爽と踵を返し、かもめと葉月をともなって去っていく。
その小さな背中が校舎の中に消えた後。やがて、男子生徒達の間から歓声が上がった。
こうして、生徒会と男子生徒の勝負第一戦は、男子生徒側の勝利に終わったのである。

神菜の住む屋敷は、白姫学園から歩いて十分もかからない場所にある。
普通の家屋が四軒ほど収納されそうな広さを誇る豪邸だが、ここは実は天井院家の本宅では
ない。神菜が学園に通うために、使っている別宅なのだ。
住んでいるのは彼女と、使用人が十数名。
神菜はその家路に着いていた。
「まったく、今回の勝負は無様すぎたわ。次はもっと気を抜かないように、反省しないと」
ぶつぶつ、とつぶやいている。かくれんぼ大会に負けたことを反省しているのだ。
次は絶対に勝つ。心に誓いながら、やや上り坂になっている住宅街の道路を歩いていく。
やがて、高さ五メートルはある金属製の柵に囲まれた、洋風作りの屋敷が見えてきた。
門柱にある正方形のセンサーに手をかざすと、指紋が承認されて門が開く。
神菜はぶらぶらと屋敷の中を歩いて、母屋……この屋敷には他にも、使用人が住んでいる離れなどがある……の玄関へと向かった。
ふと、玄関先に、使用人の制服を着た誰かが立っていることに気づいた。
彼は、すたすたと歩いてくる神菜が、ドアの前に立ったことを確認すると、そのドアを開けた。ぶっきらぼうに告げる。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
「ん、ご苦労様……水樹」
神菜はにっこり笑ってうなずくと、その使用人を……水樹を連れて、屋敷に入った。

生徒会ばーさす!~お嬢様学園の暴君~です。
まぁ、ライトノベルらしいラブコメなんですが三番勝負がなかなか面白い。
かくれんぼ、鬼ごっこと来てデート勝負。
単純な遊びに見えて実は無茶苦茶と言う
バカ具合がいい感じでした(^^
ぬ~んってした時間を過ごすのにいいですね
 


生徒会ばーさす!~お嬢様学園の暴君~ (集英社スーパーダッシュ文庫)

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