著者:本田 透
イラスト:相音うしお
女性アレルギーを克服して、"がくぶる"しなくなったはずの御影美千緒だが、逆に女の子を見るとどきどぎが高まりすぎて前屈みに。そんな中、夙川可夢偉のボディガードであった甲陽園ナガレが帰国し、美千緒へ護衛権を賭けた挑戦状を叩きつけた。美千緒は可夢偉の側にいることは出来るのか!?
明日は、修行最終日。
きっと大丈夫だ、俺の後遺症は、女性過敏症は治っている―
明日、そのことを夙川さんと岡本の前で証明する。
姉貴とななみの期待に応えて、俺はこれから本気を出す。
そして、ナガレと沙耶会長に認めさせるのだ。
俺だって、本気を出せぱ夙川さんの隣に立つにふさわしい男になれるということを!
「俺は、やるぞ!!!!」
叫びながら、明後日に迫ったナガレ対策のため、美千緒は仮想ナガレを相手にシャドースパーリングを開始した。
動きやすいようにパンツ一丁となり、見えない仮想ナガレの幻を脳内に思い浮かべながら、その幻を網膜の上へと投影していく。
見えた!
月明かりの下、スポーツブラにスパッツというあられもない姿で忍者刀を構えるナガレの姿が、美千緒の目にぼんやりと浮かび上がってきた!
ぷるぷる。
ナガレが左右に身体を振ると同時に、スポーツブラの盛り上がりもプリンのように揺れる。
思わず鼻から出血しそうになりながら、美千緒は内股に構え、気合いを入れ直す。
おおおおおおおお。
気合いだ、気合いだ、気合いだ!
たかが小学生のスポーツプラごとき、本気を出した俺をはばめるわけがないっ!
そうとも。俺はつまり、意識しすぎなんだ!
気合いで自意識過剰を吹っ飛ばせば、いくらM16で研鎭を積んできたボディガードとはいえ子供相手に遅れを取るはずがない!
悪いなナガレ、お前が夙川さんを守りたいという気持ちはよくわかるお家再興のために、母の志を果たすためにという夢も理解できる―だが俺だって、軽い気持ちで「夙川さんの隣に立ちたい」と言ってるんじゃない。
ここから始めなければ、俺は一歩も先に進めないんだ。
姉貴たちにいつまでも甘えているわけにはいかないんだ。
独り立ちしてみせなきゃな!
「やるっ!俺は、やるっ!!!!やってやるっ!!!!」
仮想ナガレが構える忍者刀めがけて、美千緒は「くわっ」と猛獣のごとく口を開いて頭を落とし、地を這うような姿勢で突進した。
「やってやるぜええええええ!!!!!!」
月に向かって暑苦しい声で吠えながらパンツ一丁で踊っている痛々しい美千緒を草葉の陰から観察していた二人の影ーウテナとななみは、お互いに「ふしゃーっ」と睨みあいながら言い合うのだった。
「ほらごらんなさい。みっちーは、私とやるって言って気合い満々じゃない。かわいそうに、お姉さんのことを考えると身体が火照って火照って寝付けないのよ……あそこまで思い詰めて悶々としているだなんて……かわいそうなみっちー」
「違うよ―。アニキはあ、あたしとエッチなことをやるって言って盛り上がってるの♪おうちで寝ていたら、ななみを襲いたくなっちゃうから寝ていられないの♪んもう、アニキってば遠慮しなくていいのにい」
「ナナ?何を言っているの?みっちーは、私にときめいて興奮しているのっ!」
「ちがうもん。あたしだもん。ぶーぶー」
「とにかく、女性アレルギー時代よりも今のみっちーのほうが心配だわ。早くなんとかしてあげないと、あのパンツ姿で学校に乱入してきて女子高生を襲ったりするかもしれないわ」
「あー、確かに。今のアニキってば完全に性欲をもてあましているから、自分の妹以外の女の子にも興奮する変態になっちゃってるかもぉ……」
「あら?ナナ、何か今、妙な発言を……」
「あん。気のせいだよ、姉さん」
「あっ、みっちーがパンツ一丁ででんぐり返しをはじめたわっ?」
「かなりキテるね。うわあ呼吸があらいよ、全身汗みどろだよアニキ~」
「これは重傷だわ。し、仕方ないわね。私がみっちーを鎮めてあげないと……お、弟の介護は姉の仕事なのだから……あ、あくまでも私は、み、みっちーが欲望をもてあまして一本切れて通り魔とかネット殺人予告犯とか手鏡痴漢男になってしまうことを心配して……」
「んー姉さんは理屈が多いなあ~。その点あたしは、アニキにならいつなんどきなにをされてもオールオッケーだから♪」
「もうちょっと介護意識というものを持ちなさいよナナ。どんどん破滅の道を転がっていくみっちーを救えるのは、どうやら私しかないようね」
「んもう。アニキを助けてあげられるのは、い・も・う・とのあたしだけだってぱっ」
月夜の公園で「やるぜ、俺はやるぜ」と牙を剥いて庖吼しながらパンツ一丁、汗みどろで一心不乱に暴れ回る欲求不満爆発寸前少年・御影美千緒。
もはや、姉(妹)が一刻も早く美千緒の心身を鎮めてあげる以外に、彼が青春の変態犯罪者にならずに生きのびられる道はない。
ウテナはそう結論し、(ここまで追い詰められている美千緒が人前で爆発する日はおそらく明日。間違いなく夙川可夢偉は美千緒に襲われる。明日は一致団結して夙川邸に潜入し、ともに身を挺して美千緒の鎮静剤になるのよ)とななみに視線で通達、こっくりとうなずき合った。
美千緒がパンツ一丁で男祭りを開催していたその時刻、夙川さんの部屋では―
甲陽園ってホントに出てきたよ(^^
次は青木か深江。いやここらで逆方向に鳴尾ってのもありかな
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