著者:麻宮 楓
イラスト:有河 サトル
「別にあなたのために記億なくしたわけじゃないんだからねっ」
朝、いきなり全裸で飛び込んできた彼女の言葉はそれだった。
僕・成瀬冬弥の目標は一人前の魔法使いになること。日々是勉強中……なんだけど、魔法を使えばいつも幼馴染みの沙織のスカートをまくってしまったり、怒らせてばかり。そんな僕の許に現れた記憶喪失な上に貴族と言い張る強気な少女・ナナのせいで、より劣等生のレッテルが……。
しかも彼女の記憶を取り戻すまで一緒に住み込んで面倒を見ることに!?
……あの女の子、ちゃんと大人しくしてるかな。多少部屋を散らかすくらいならいいけど、またクシャミでもされて火事にでもなったら大変だ。あの子の存在が周囲にバレるし、火事の責任は当然、僕にふりかかってくるだろう。
もしかして、あの子を部屋に置いてきたのは間違いだった、のか?
いや、でもここへ連れてくるわけにもいかないし。他に選択肢が無かった以上、仕方ないさ。だってあの子は、裸で他人の部屋に飛び込んでくるような、ちょっとおかしな女の子なんだ。
なるべく慎重に対処しなきゃいけないんだよ、うん。
―そういやあの子、結構可愛かったよな。
目は大きかったし、髪はサラサラだったし。
手足はほっそりとしていて、ちょっとでも強く握ったら折れてしまいそうなほど。
肌はまぶしいくらいに真っ白で、触れたときのあの感触はとっても柔らかくて……。
って、そうじゃない、そうじゃない。
ついついあの子の姿が頭に浮かび、頬が熱を帯びてくる。
そんなものを思い出してどうするんだ。しっかりしろよ、僕の理性。
それに、よく考えろ。可愛いからってなんだっていうんだ。あの子のせいでせっかく完成させた『妖精の加護』が台無しになったんだぞ。
魔法だかなんだか知らないけど、口から火を吹いたりするような危ない奴に、気を許すわけにはいかないんだ。
「ちょっと、聞いてる?」
「えっ?」
考えにふけっていると、沙織が再び詰め寄ってきた。
頭の中を覗かれたような気がして、思わず息を詰まらせる。
「だからー、色々ってなんなのよ?」
「さ、沙織が気にするようなことじゃないって言ってるだろ」
「別に教えてくれたっていいじゃない。困ってることでもあるなら、力になるんだから。今更遠慮なんてする仲じゃないでしょ」
いや、説明できないから困ってるんだってば。
なんとか切り抜ける方法はないかと考えあぐねていたそのとき、
「?」
視界の隅に、影が映った。
なんだ、今のは?
影が見えた方向、窓の外へと目を向けてみる。
晴れた空には雲一つなかった。代わりに、何か小さな点が宙を飛び回っているのを確認できる。
鳥か何かだろうか?それにしてはやけに大きい気もするし、なんだか少しずつ大きくなってきてるようにも思える。
しかし、なんだか分からないけど、ちょうどいい。話をそらすチャンスだ。
「冬弥?」
僕の反応をいぶかしく思ったのか、沙織は首をかしげてこちらを見ている。
そんな沙織に向かって、口を開いた。
「な、なあ、あれって何かな?」
そう言って僕は窓の外を指差し、席を立って窓際へと歩く。
「何って……、あっ、そんなこと言って誤魔化すつもりでしょ?」
沙織は一瞬考えるような表情を見せたが、すぐに声の調子が厳しいものへと変わる。
「い、いや、違うよ。何言ってんだよ」
くそっ、さすがに鋭いな。
でも、誤魔化してるのは本当だけど、何かが見えてるのも確かなんだ。ひるむ必要なんて、ないよな。
「ほら、あれだよ、あれ」
事実を証明するために、僕は勢いよく窓を開けた。
そしてわざとらしい口調になりながらも、空を指差す。
「ほら、見ろよ……。あそこに何かあるだろ?あれはいったい、なんなんだろうなー?」
――その瞬間、僕の身体は強い衝撃に襲われた。
「はうぐうっ?」
胸元が真正面から圧迫され、その勢いで後方へと吹っ飛ぶ。
そのとき、僕は確かに、確かに宙を舞ったんだ。
一瞬の静寂の後、派手な音を立て、教室の机を倒しながら床を転がる。
「ぬ、ぐ、ぐ、ぐ、ぐ……」
痛みに顔をしかめつつ、苦悶の声を上げた。
「な、なんか今朝も似たようなことがあったんじゃ……」
それに、なんか重いな。身体の上に何かが乗っかってるような……。
ん―、なんだろう?この重さには、覚えがあるような気がするぞ?
「やっぱり、ここにいたんだ」
すぐ側で、聞いたことのある声がした。身体を起こし、疑問のままに手をさまよわせていると、不意に柔らかな感触が指先を伝う。
「っ!」
この感触にも覚えがある。ぷにぶにとしていて、触れているだけで心地よい、不思議な感覚。
「もしかして、これって……」
僕はうっすらと目を開けて、視線を胸元に向けようとして、
「いつまで触ってんのよ、このド変態!」
思いっきり突き飛ばされた。
「むぎゃっ!」
僕はまた身体を打ちつけられ、その勢いで床に頭をぶつけて、ロから悲鳴が漏れる。
「お、お前なあ……」
痛みに耐えをがら目を開け、確認する。
いつの間にか仁王立ちになってこちらを見下ろしていたその人物は、今朝、僕の部屋に飛び込んできた、あの記憶喪失の少女だった。
まじ×どら (電撃文庫)です。
まじ×どら??とらドラ!みたいな物かな?って思ったけど違います。
魔法少女です。魔法少年です。ドラゴンです。カラーページは何故かパンツです。何故にパンツ?
まじ×どら (電撃文庫)
著者:あさのハジメ
イラスト:菊池政治
クラスメイトの涼月奏に執事として仕えている美少年・近衛スバル。
ふとした事故により、俺はスバルの秘密を知ってしまう。華奢な身体。かすかに漂う香り。掌に吸い付く柔らかい感触……って、こいつ女の子だったの!?
「ボクはおまえの記憶が飛ぶまで殴り続ける。それが執事の記憶消去術だ」
「その方法に執事は関係ねえだろ!」
どうやら彼女は家庭の事情とやらで、女の子であることがバレると執事を辞めなくてはいけないらしい。そんな中、奏はスバルの秘密を守ることと引き替えに、ある協力を俺に申し出てくるが……?
「そう。スバルは今日、あなたに自分が女であることを知られてしまった。あの娘は自分が涼月の執事であることに並大抵じゃない拘りを持ってるの。だからあなたの口をどうにか封じようとした。……ごめんなさい。私の執事が迷惑をかけたわ」
「………」
そういえば、近衛はどこにいったんだろう。まさか、秘密がバレたショックで引きこもりにでもなったんじゃ……。
「なあ、近衛はどこにいるんだ?」
「ふふ。心配してくれてるの?まあ、あなたが会いたいんならすぐに会えるわ。だって――スバルはこの部屋にいるんだもの」
「……へ?」
この部屋にいる?どこに?
きょとんとする俺を尻目に、涼月はもう一つのベッドの方に歩いていって、そこを仕切っていたカーテンを開けた。
「な――」
瞬間、言葉を失った。
俺が拘束されているベッドの隣にあるもう一つのベッド。
確かに、近衛スバルはそこにいた。
「んぐっ!んぐぐっ!」
声にならない声があがる。
当然だ。リングギャグというんだろうか。近衛の口には黒い口枷が無理矢理詰め込まれていた。しかも、それだけじゃない。全身を覆う銀色の鎖といくつもの南京錠。たぶん後ろ手に手錠もされているんじゃないか。
拘束。
目の前の光景に比べたら手錠だけの俺なんてまだ生易しく思えてくる。文字通り、近衛スバルは徹底的に拘束されて、ベッドの上に座らされていたのだ。
「お、おい、これは、どういうことだ……?」
俺は震える声で訊ねた。確かに、これじゃ涼月が俺のベッドで眠ってたのにも納得がいくけど……。
「え?まさか、これでも十分じゃないって言うの?ふふん、あなたもなかなかサディストね。仕方ないわ。じゃあこの鼻フックを―」
「やめろって!どうしてこんなマネしたんだ!近衛はおまえの執事じゃないのか!?」
「えー、せっかくあなたの為にしてあげたのに」
「俺がいつそんなこと頼んだ!?」
「きっと喜んでくれると思ったのよ」
「あいにくこんな特殊な趣味は持ち合わせてねえんだよ!」
いや、マジで。アブノーマル過ぎる。もうちょっとソフトじゃないとついていけません。
「そう、じゃあ外してあげた方がいいのかしら?」
「当たり前だ」
「わかったわ。後悔しないでね」
「するか!」
したら人間的に終わってしまう気がする。それにしてもなんてヤツだ。自分の執事を拘束するなんて。この女、クラスにいるときとは本気で別人じゃねえか。
「げほっ!ごほっ!」
がちゃがちゃとリングギャグが外され、近衛が咳き込んだ。
「ひ、ひどいです、お嬢様!どうして、どうしてこんなことをするんですか!?」
ああ、そりゃあ抗議したくもなる。自分の主人に拘束されたんだ。労働基準法違反もいいとこだろう。
けど、もう心配ない。あとは身体を縛っている鎖さえ外せば、近衛は自由に……。
「早く……早くこの鎖を外してください!じゃないとそこの変態を殺せません!」
「………」
……おかしいな。なんか、今ひどく物騒な台詞が聞こえたような気が……。
「おい、変態め!そこでガタガタ震えて待っているがいい!殺してやる!殺してやるぞ!!おまえの脳ミソをアルゼンチンまでふっ飛ばしてやるからなっ!」
近衛は自由になった口で元気に俺への殺害予告を叫んでいた。
うわああ忘れてた!コイツ、どうにかして俺を闇に葬ろうとしてたんだっけ……!
「そんなに焦らなくても大丈夫よ、スバル。今すぐ外してあげるから」
薄っすらと微笑みを浮かべながら、涼月が近衛を拘束している鎖に手を伸ばす。
「ちょ、ちょっと待て!やめろ涼月っ!」
ピタリと。
俺の言葉に涼月の指が止まる。
しかし、その顔は未だに不気味な笑みを湛えていやがった。
「どうかしたの、ジローくん。私はあなたに言われた通りスバルを自由にしているだけよ」
彼女は、くすくすと心底楽しそうに口唇を吊り上げた。
「教えてあげなかったけど、今あなたが無事なのも私のおかげなのよ。放課後、理科室で滅多打ちにされていたあなたを助けたのは私。その後、暴れるスバルを止めたのも私。どう、ジローくん。少しは自分の立場がわかった?」
「……はい、わかりました、涼月さん」
「え?ごめんなさい。今なんて言ったのかしら。よく聞こえなかったから、もう一度お願いできる?」
「……はい、助けていただきありがとうございました、涼月様」
「ふふ、わかればよろしい」
満足気に言って、涼月は鎖から指を引いた。
……今わかったことがある。
涼月奏。
この女、間違いなくSだ。しかもドS。どうしようもなく嗜虐趣味持ちだ。クラスにいるときと違って、今の涼月は黒い太陽みたいに燦然と輝いてやがる。これが学園一の美少女の本性。……あれ?おかし唆な。急に視界がにじんできた……。
「そんな!この鎖を外してくださいお嬢様!」
ガチャガチャと南京錠を揺らしながら、近衛は叫んでいた。
「そこの変態はボクの胸を無理矢理触ったんですよ!しかも興奮して鼻血まで出した犯罪者予備軍です!今すぐ息の根を止めましょう!」
「……おい、あれは事故だって言っただろ。悪気はなかったんだ。それに、おまえはもう十分俺を殴ったんじゃねえのかよ?」
「黙れ!殴ったと言ってもそこまでじゃない!せいぜい消火器がヘコむ程度だ!」
「思いっきり殺人未遂だろうが!」
俺じゃなかったら三途の川で背泳ぎしてるぞ。こういうときだけは自分のタフさをありがたく感じるよ。
「そもそもどうして男装してるのにパンツは女物なんだ?トランクス穿けよ」
「う、うるさい!男物の下着なんか気持ち悪くて穿けるかっ!」
はあはあと近衛は息を整えてから、
「それに、おまえのせいで……おまえのせいでボクは執事をクビになってしまうんだぞ!どうしてくれるんだ!」
「そう怒るなよ。今の日本で失業なんて珍しいことじゃない。明日あたり一緒にハローワークに行ってやるから」
「そ、そんなのいやだーっ!ボクは、どうしてもお嬢様の執事でいなくちゃいけないんだ……っ!」
げっ。やばい。コイツ、泣きそうだ。というかもはや泣いている。近衛は鳴咽を堪えながら、目に大量の涙を滲ませていた。
「呪ってやる!ボクがクビになったらおまえの枕元にバケて出てやるからなっ!」
まよチキ! (MF文庫J)です。
まよチキ!とは「迷える執事とチキンな俺と」を略した物だそうです。
変に回りくどい描写とか無くさらっと読めます。
執事券欲しいです……。
まよチキ! (MF文庫J)
超自宅警備少女ちのり2 エクストリーム・エグザミネイション (GA文庫)
著者:小幡 休彌
イラスト:しゅー
「あたし、やっぱり帰ろうかなあ」
「くじけんの早えーーー!まだ学校まで半分も来てませんよ!」
瀧口譲は梅木家の超自宅警備少女ちのりとともに、学校へ向かっていた。
天才のちのりといえども定期試験を無視するわけにはいかないからだ。
登校中、早速ぐずりはじめるちのりをなだめすかす譲。そう、譲の受難の日々はまだまだ続いているのだ。
そんな中、巨乳のボランティア講師シスター・プリンによる家庭訪問によって、ちのりのテンションは一気にヒートアップ!
だがそのシスターにもなんだか思惑があるようで……?
はた迷惑なヒキコモリ少女がひきおこすドタバタコメディー第2弾!
いつもは混み合う朝の女子トイレも、今日ばかりは地の利の貸し切り状態。
のんびりと用をすませたちのりは、手洗い場でふと、人の気配を感じて顔を上げた。
鏡の中に見慣れた美しい顔があった。
シスター・プリンだった。
「おはようございます、チノリさん」
「あっ、ルゥルゥだ。おはよー」
ちのりは笑いかけながらも、小首をかしげる。
「今日はなんで学校にいんの?」
「もちろん、あなたに会うためですよ」
「へ?」
シスターの背後から、細く黒い触手がしゅるしゅると伸びた。触手はたちまちちのりの顔をぐるぐる巻きにし、その目と口をふさいだ。
むぐう?目を開けたのに、なんにも見えない。声も出せない。
ちのりは身じろぎしたが、体はぴくりとも動かせなかった。どうやら目隠し、さるぐつわをされて、椅子に縛り付けられているようだ。少しすると、手足をきりきりと戒めている縄の感触がわかってきた。
今、どこにいるのかもわからなかった。わかるのはただ、鼻のまわりがやけにムズムズすること。意識を失う前に、何かの粉を吸わされたことはなんとなく覚えている。苦い、乾いたカビみたいな、イヤな匂いの粉だ。
その粉のせいか、どうも頭がぼんやりする。でも、なんだかちょっと、いい気分でもある。
「あら、もう気がついたのかしら?」
顔のそばで、シスターの甘い声がした。「ルゥルゥ」と呼びかけようとしたけれど、口に布をかまされているので、「ぐうぐう」というくぐもった声しか出なかった。
んもう、ルゥルゥったら、朝かち緊縛プレイなんて激しすぎ。
しかも学校でなんて、インモラル感倍増。やだ、これから追試なのにい。ああでも、こうやって全身縛られるのって、キライじゃないかも。なんだか、新しい可能性に目覚めそう。くふふ、くふふ。
「ねえ、この子、ヨダレだくだくで笑ってるけど、大丈夫かしら?」
シスターが言った。どうにもここには他にも誰かいるようだ。声変わり前の少年のような澄んだ声が応えた。
「没薬の効果やろ。はるかエジプトはネフレン=カの墓所深くから持ち出した神秘の粉や。あれだけ吸うたら、そこらの女子高生なんぞたちまち人事不省のラリパッパや」
んもう、あたしをこんなに縛り上げておいて、放置してお喋りしてるなんて、ルゥルゥひどい。ちのりは思った。
あっ、でも、こんな風にないがしろにされて放置っていうのも、けっこうクるわ。
そんなみじめな自分にゾクゾクきちゃう、根っからどMなちのり十七歳。
「ねえ、この子、ひとりでビクンビクン震え始めたけど……何かの副作用じゃない?」
少し心配そうに、シスターはもう一人の人物に尋ねる。声はうっとうしげに言う。
「そんなことはないやろ。だいたい別に副作用でもええやんけ。どうせこいつも、しまいにはイケニエや。ええから早く儀式始めんかい」
「だって、こんな風にケイレンしてたら気になって集中できないわ」
「邪魔くさいのお。気になるんやったらさるぐつわ取ったりいな」
口に押し込まれていた布が外され、目隠しもほどかれた。ちのりはそっと目を開けた。
そこは空き教室だった。視界はぼやけているが、どうやら数日前に迷い込んだ、旧書道教室のようだ。ただ、窓には黒いカーテンが引かれていて、中はひどく暗い。灯りは、ちのりの周囲の何本かのロウソクだけだ。
その教室の、本当なら教卓があるあたり。そこに置かれた椅子に、ちのりは縄で縛り付けられているのだった。
ちのりの目の前には、シスターらしい人と、その足下に、何か黒い小さな生き物がいた。パグ犬ほどの大きさの怪生物が、不敵に笑った。
「くっくっくつ、わしの姿を見てびっくらこいたようやな」
ちのりは目を細めてそちらを凝視するが、びっくらこいてはいない。
「眼鏡がないから、よく見えらい」
「チッ。なんや、いちいち難儀な娘やな。おい、眼鏡返したれ」
シスターが外れていた眼鏡をかけてくれる。ちのりの視界が、やっと明瞭になる。
「どや、ちょっとはたまげたか」
キノコのような、クラゲのような、うねる触手をもった奇怪な生物が、ぷくっと軽く体をふくらませる。胸を張っているつもりらしい。
ちのりは眉一つ動かさず、ただ
「ああ」
と言っただけだった。黒い生き物はムキになって怒鳴り散らした。
「おい!感動うっすいな自分!わしの姿よう見てみ!めっちゃ黒いやろ!触手めっちゃキモイやろ!ほてから日本語ぺらぺらしゃべってんねん!いくらラリパッパになっててもビックリするやろ普通!人知を超えたコズミックホラー感じるやろ!キャー言うやろ普通!お前脳みそどうなってんねん!」
「うむふぅー、あらし、異次元の生物とか見慣れてっからさあ」
あやしい呂律で、ちのりは言った。それから、首をシスターの方にめぐらせる。
「うわあ、ルゥルゥ!すごーい!」
こちらには素直に目を見張る。シスター・プリンのいでたちは、いつもとまるで違っていたからだ。
頭をすっぽり覆うフードの付いた長い黒いマント。そしてその合わせ目からのぞく衣装は、スキンタイトな黒のレザースーツだった。深い深い胸の谷間も、膝の上まであるロングブーツの上に露出している大腿部も、なんとも扇情的だった。フードの中からは、豊かな金髪があふれ出している。そして手には、やたらと大きくて分厚い本を抱えていた。
「ねえねえそのコス、自作?素材ろこで買ったの?オカドヤ?超エローい。鼻血ぶーだよ」
「コッ、コスプレじゃないわっ!これは儀式のための正式な装束よ!」
「儀式?」
シスターはフードをはね上げて顔を見せると、クックッと笑ってみせる。
「そうよ。太古に封印された、偉大なる異界の神を召喚する儀式。わたくしはその巫女の役を父祖から伝えられたる偉大な魔道師。そしてこれにあるは、《旧支配者》の先触れにして我が朋輩、ニョグタンよ」
ニョグタンと呼ばれた黒い生き物が、ぴるぴると触手を振った。
「そおいうこっちゃ」
ちのりは信じられない、という顔で、じっとシスターを見つめていた。
「……ひとつ、聞いてもいい?」
「何かしら」
「さっきトイレでは普通のカッコだったけど、そのばっつばつの女王様スーツ、わざわざ着替えたの?そこらの物陰かどっかで?ごそごそって?いやーんルゥルゥったらもうこのエロス番長!」
そう言ってキャキャキャと笑い出すちのり。真っ赤になったシスターは涙目で歯を食いしばり、ちのりをぶん殴ろうと、手にした巨大な書物を振りかぶった。慌ててニョグタンが触手を伸ばしてシスターの腕を押さえつける。
超自宅警備少女ちのり2 エクストリーム・エグザミネイション (GA文庫)です
引きこもりオタクな自宅警備員ちのりちゃんのドデカヘロンピーーンチ!です
外は危険がいっぱいです
超自宅警備少女ちのり2 エクストリーム・エグザミネイション (GA文庫)
著者:蒼山サグ
イラスト:てぃんくる
部長のロリコン疑惑から一ヶ月、ようやく周囲の噂も落ち着いてきた今日この頃。
バスケへの想いを再燃させてくれた大恩ある少女たち五人のため、昴は再び慧心学園バスケ部のコーチに返り咲く。
そして彼女たちのさらなる成長を目指し、小学校で合宿を行うことになったのだが、解決しなくちゃいけない問題は山積みで。
「ふぁ……見てる。昴さんが、こっちっ」
「ひな、おにーちゃんに見て欲しいなー」
「……まー、すばるんもヒトノコだしな」
「えへへ。紗季ちゃんはどうなのかな?」
「ちょっと私まだそういうのは興味がっ」
それ以上に色々な意味での問題が山積みでして!?
木陰からもう少し距離を取り、柔剣道場脇のベンチに腰掛けて遠巻きに真帆を見守る。
座ってから七本のシュートを数えた頃、後ろからゆっくり静かに人の気配が迫ってきた。
「智花」
すとんと隣に座り込んだ少女の顔を視界に収め、笑みを交わし合う。ピンク色のパジャマ姿で、春たく季節とはいえ少し寒そうだった。
「……もう、寝てた?」
「はい、ひなたがお風呂ですっかり熟睡しちゃって、みんなで着替えさせるのが大変でした。あはは。……でも私はちょっと、すぐ眼が覚めてしまって、それでお布団の中で考え事してたら竹中君が帰ってきて、小さい電気だけ点けて奥まで案内して、戻るとき隣を見たら真帆がいなくて、それで外に出てみたら……ふふ」
「……ごめんな」
「ふぇ?」
「寝付けなかったの、俺のせいだろ。相談、持ちかけちゃったから」
「ぜんぜんです。頼って頂けて嬉しいですし…………昴さんには、本当に感謝してます。私、みんなと一緒にいられれば、それだけで満足だって思ってましたし、それは今もそうなんですけどー」
智花は言葉を一度止め、遠くの真帆を優しい瞳で見つめる。
「―でも、やっぱり。嬉しいみたいです、すごく。友達がバスケ、頑張ってるところを見るのって。……昴さんが来てくれたから、みんなやる気になって、私も嬉しいんです。本当に、ありがとうございました。……できれば、これからもよろしくお願いします。……これからも、ずっと」
はにかむ智花の声は次第にフェイドアウトしていき、最後の方はほとんど聞こえなかった。
けれども、彼女の気持ちはちゃんと受け止められたと思う。
「……真帆は、どのみち頑張っていたと思うけどな。……ううん、真帆だけじゃなく、みんなか。でも、うん。俺だって嬉しいよ。バスケに一生懸命な子たちと出会えたおかげで、俺も頑張れる。智花に、そしてみんなに……俺だって感謝してる。……だから、今もここにいるんだ。はは。だって合宿なんて、賭けの約束には入ってなかったしな」
「昴さん。……えへ」
見つめ合って、照れくさくなって。二人して目を逸らす動きがシンクロする。
それからは、無言。ただ黙って、月明かりに伸びる真帆の白い腕を見つめ、壁に跳ね返ったボールが震える音を聞く。そんな時間が、長らく過ぎる。
「たぶん、大丈夫だと思う」
顔から火照りが引いた頃、ゆっくりと眩く。
「えっ?」
「真帆と、竹中。きっと何とかなるよ。だから智花。今夜は安心して、眠ると良い」
「……よかった。ふふっ、実はさっき竹中滑の顔を見たとき……そうなのかなって、ちょっとだけ思いました」
ふうっと智花が長い息を吐き、そこで再び言葉が途切れた。
真帆のシュートは、まだまだ続く。たぶん、合計で二百本打つつもりなのだろう。ちょっと頑張りすぎかな、とも思うけど。
あの子が自分で選んだ数だ。尊重して、見届けることにする。
「……弱ったな」
それから何分か経った頃。真帆は跳ね返ってきたボールを拾うと、不意にごろりと芝生の上に仰向けになった。どうやらノルマが終了したらしい。
そこで、もういい加減夜も遅いし迎えに行って労ってやろう……と腰を上げかけたところ、
「……あれ、智花?」
ふと横を見れば、パジャマの少女は柔らかく眼を閉じて、聞こえてくるのはすうすうと穏やかな吐息。……なるほど。どうりでさっきから左半身に淡い重みが伝わってきてたはずだ。
いやはや、これでは下手に動けない。ならば仕方あるまいと、真帆が戻って来るのを待って一緒に帰ろうと思い直したのだが、
「って、うわー。あっちもか……」
もう一度目をやれば、時計塔の壁際でシャツをはだけ、おなか丸だしで大の字になった真帆が、いつの間にやら遠巻きでも分かるほど大らかな一定のリズムで横隔膜を収縮させていたのだった。
「……弱った、な」
まずいそ、あの汗だくヘソ出しは。早く何とかしないと風邪を引かせてしまう。
しかし智花が今まで寝付けなかったのも俺の責任なので、起こしてしまうのは実に忍びない。
―長谷川昴、ここに進退窮まれりである。
「……で、こんな折衷案を選んでみたものの」
大失敗だった。
追い詰められた俺はまず智花を起こさないようにおぶり、真帆の許へ。それから二人目の膝裏と背中に腕を差し込んで持ちあげ、両者を一度に小屋へ運ぽうと試みたわけだが。
うん、これ、新手の筋トレ方法として商標登録してしまいたいくらいキツイ……。
おんぶと言えども後ろの智花は手足を回してくれているわけでもないので、俺は落とさぬよう思いっきり前傾せざるを得ず、そんな体制だと真帆の体は腕の筋肉だけで支えなくてはならない。いくら細身の小学生女子とはいえ……この抱え方では重い……重すぎる。既に二の腕はぷるぷる、智花はふらふら、限界が近いのに否応なしに歩みは牛歩を強いられる。……鳴呼、三途の川が見えそうだ。
「たすけて……誰か」
無意識に声が漏れる。
―ぎゅ。
なんと、神の思し召しか。後ろの智花が急に、抱き枕にするように俺の首筋と腰へしがみついてきてくれた。……助かった。これなら、なんとか。
「――って、もしかして智花、起きてる?」
小声で訊いてみたが、返事はすうすうと吐息のみ。……やっぱり偶然の助けか。
「ん、とにかくありがと。……はは。智花って、幸運の女神様かもな。俺にとって」
―ぎゅ。
もう一度強く、智花が身体を押しつけてくれたような気もしたが……既にあちこちの筋肉が限界で、それどころではなかった。
交換日記 (SNS)05- ◆Log Date 5/20◆
紗季『はーい、緊急会議はじめまーす。』
あいり『は、はいっ。』
紗季『お、珍しく積極的ね。良い事よ。では香椎愛莉君。』
あいり『えへへ。智花ちゃんは起きていたと思いますっ。』
紗季『ふむ。証拠はありますか?』
あいり『入ってきたときはぎゅうってしてたのに、長谷川さんがお布団に下ろそうとしたときすぐに離れちゃったからです!』
紗季『うん、君もなかなか観察眼が備わってきたわね、満点です。……ふふ、完壁に狸寝入りね、あれ。気付かなかったのは、たぶん長谷川さんだけ。』
湊智花『ちょ、ちょっと!濡れ衣だよっ!』
紗季『あらあトモ、ずいぶんとお早い反応で。みんなマナーモードなのにね、今。』
湊智花『……あ。』
あいり『えへへ、良いなあ智花ちゃん。……でも、本当はお姫様だっこの方が良かったよね、智花ちゃんも。真帆ちゃん羨ましいなあ。ぐっすりで覚えてないのだろうけれど。……ちょっと、もったいないかも。』
湊智花『ち、違うのっ!最初は本当に寝ていたのだけど途中で眼が覚めて、その時昴さんがすごく真剣だったから、邪魔しちゃダメって思って……!それに私、お姫様だっこなんて……別に興味……っ!』
紗季『はいはい。今度直接お願いしてみると良いわよ、『抱いて下さい!』って。ふふふふふ。』
ロウきゅーぶ!〈2〉 (電撃文庫)です。
合宿です。お泊まりです。だんだんスキンシップが増えております。
ひなたちゃんのパンツも手に入ります。
幼なじみも絡んできます!
スポーツコメディなんです!
ロウきゅーぶ!〈2〉 (電撃文庫)
ねんどろいど 初音ミク アブソリュートHMO・エディション (ノンスケール ABS&PVC塗装済み可動フィギュア)
劇場版“文学少女
ねんどろいど 97 雪ミク (ノンスケール ABS&PVC 塗装済み可動フィギュア)
googleさんが居るこのページでは
貼れないストーリーをこっちでやってます。
18歳以上の方向け……。
こそっと萌えようぜ
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迷い猫拾いました
大事に育ててくれますか?
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